友達からもらった。 この本の帯に「全国学校図書館協議会選定図書」「日本図書館協会選定図書」と書いてあるけど、この本の内容は、手がかかって仕方のなかった旦那さんを見送り、やっと自分の思うように生きていける! と喜んでいる黒柳朝の「老齢期の生き方」についてのエッセイで、彼女の性生活の悩みまで書いてある。小中学生には、読んでもピンと来ないし、人生の指南書にするにはあまりにも早すぎる。「トットちゃん」効果の余波だったのだろうか……. この本にも書かれているが『チョッちゃん』で表舞台に出た黒柳朝は、アメリカやカナダでも講演会をしていた。たぶん、この本はトロントに彼女が来たときに、誰かが買って、サインをしてもらったもののよう。いろんな人の手を経て、ワタシのところへたどり着いたところが、いとおしい。 本の内容より(内容は既に知っているものが多かった)、そんなことのほうが心に響いた。
Author: Kyoko Nitta
Half of a Yellow Sun
ブッククラブに行きはじめて4ヶ月。今月はチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの本だったが、なかなか彼女のフルネームが覚えられず、人に「今誰の本を読んでるの?」と聞かれても、「チチマンダっていう人の本」と言っていた。 というわけで、あっちのほうのサイトにブッククラブでの話し合いだとか、今月のお題については書いておいたので、興味のある方は是非。
『お茶漬けの味』と『天国と地獄』
白黒映画の仲間と日本の白黒映画を見た。小津安二郎に黒澤明だからみんな詳しい。 『お茶漬けの味』 話の展開がスローなのは想定内だったけど、タイトルが最後のオチをばらしてしまっているので、途中で「エンディングはお茶漬け食べて終わるよな」と思い始めたとたん、つまらなくなってしまった。英語のタイトルも「The Flavor of Green Tea over Rice」とマンマなので、白黒映画の仲間で日本語などまったく知らない人にこっそりと聞いてみたら、同じように「タイトルがネタバレだと思う。つまらなかった」と言った。それでも「この映画、よかったわん」とうっとりしている小津安二郎ファンもいたので、水をさしてはいかん、と思って感想を聞かれるまでは黙っていた。話の先が読めてしまっていても、別の次元の感動がもたらされているのだろうからね。 日本のことに暗い人たちに、「ライスの入っているボウルを手に持って食べるのもダメなの?」と聞かれ、「そうじゃなくてお茶漬けをズルズル啜るのがダメなの」と、何がアウトなのかが通じていなかった人もいた。食べ方には個人差があるから説明しているうちに私自身が混乱してきた。 『天国と地獄』 面白かった!! ゆっくり呼吸することすら忘れてしまっていたようで、映画が終わった瞬間に深呼吸。英語のタイトルが『High and Low』。日本語をまったく知らない仲間なのに「『Heaven and Hell』じゃなくてよかった」と言っていたけど、私も『High and Low』でよかったと思う。宗教的じゃなくて、階級差の話なので。原作がアメリカの推理小説だし、ガイジンにはわかりやすい話、というのが一緒に見に行った人たちの総意だった。しかし、またもや、日本のことに暗い人が「ゴンドーの自宅が高級そうに見えなかった」と言っていた。私はそれどころではなく、三船敏郎って本当にすごいな、と見惚れていた。
Westwood: Punk, Icon, Activist
ヴィヴィアン・ウエストウッドは好き(私はパンクとは程遠いファッションが好きで、Tシャツにジーンズという服装すらほとんどしないけど)。彼女の生き方が好きなのだ。 この映画を見て思ったのは、マルコム・マクラーレンが案外心の狭い男(ヴィヴィアン目線で言うと)ってことと、第一線を駆け続けるにはうんと年下の男と晩年を過ごすのが一番ってことと(年を取っている場合じゃない)、おばあさんになってからはあれぐらいのファッションをしたほうがよさそうっていうこと。 ファッション界の重鎮のドキュメンタリーの中では、ダイアナ・ヴリーランドのドキュメンタリーがダントツに面白いけど。
余白
クロスステッチ刺繍の大作を去年作って額縁に入れたけど、そのとき痛い失敗をした。クロスステッチ用の布は結構高いので(特にヨーロッパ製が)、周辺に余白をふんだんに取りながら刺繍するということが頭になかった。だから、額縁ぎりぎりのサイズの布に刺繍してしまった。 あれから約一年。今回はむしろ余白の取りすぎで布がもったいないぐらいだけど、額縁のサイズですごく悩んでいる。 ま、額縁の色も幅も違うけど。下のほうが、刺繍が大きく見えていいかも...... +++++ 刺繍と全然関係ないけど、ものすごーく昔、とある翻訳会社でコーディネーター的な仕事をしていたとき、翻訳にクレームがつき、日本のクライアントにミーティング中にフルーネームで(もちろん敬称なしで)、「XXXX! プロとしてのハードルを上げろ!」と罵倒された。私はコーディネーターであり翻訳を全面的にやっていたわけではないので、個人的には取らなかったけど、へこみはした。確かに改善の余地はあったけれど、それには時間が必要、すなわちお金が必要になるわけで、そこは私の出番ではなかったので、何も言えなかった。要は、両者ともに腹を切りたくないので、お客さんに言いたいことを言ってもらう、という主旨だったんだと思う。 その後、ミーティングに同席していたブラジル人の上司が私のところにやってきて、「今日は会社のクレジットカードで何でも好きなものを食べさせてやる」と言ってくれた。こういうとき私は遠慮しない。おいしいと評判のイタリアンを指定して、そこへ連れて行ってもらった(バカ高い店ではない)。 なんか余白を考えているうちに、ふとそんなことを思い出してしまった。
AIQ
あっちのほうに書いたのだけど、こっちにも貼っておく。AIの本。 https://kyokonitta.com/2018/07/09/aiq/
Design Canada
白黒映画の仲間から「ロゴのデザインについてのドキュメンタリー映画だ」と聞いて行ってみたら、意外にも面白く、感動的ですらあった。カナダ連邦政府のロゴに使われているフォントはBakerville、と小ネタまで仕入れてしまった。 まずはカナダのメイプルリーフの国旗デザインの話から始まる。50年ぐらい前に誕生した若い国旗なので、今のデザインに行き着いた経緯を知っているグラフィックデザイナーはまだ生きている。今度の東京オリンピックのロゴで日本が揉めたみたいに、カナダも国旗のデザインでは政治問題になって大いに揉めたのだ。ちょうどその頃は、モントリオールで万国博覧会とオリンピックもあって、グラフィックデザイナーの活躍の場がいっぱいあった。 だからなのか、著名なグラフィックデザイナーはその頃稼ぎまくったのか、みんなステキな家に住んでいる。 「ROOTS」の今のロゴをデザインした女性が、なぜかおでこに絆創膏を貼ったままで映画に出てくるのが個人的に面白かった。傷が癒えるまで待ってあげなかったのか、目立たなくしてあげようと誰も思わなかったのか、あの絆創膏の下には何があるのか、気になって仕方がなかったし、グラフィックデザイナーとして成功するにはオシャレが必須ってわけじゃないんだな、とも思った。でも、この人がデザインした雑誌の表紙はすごく印象的なので、たぶん多くの人がどこかで見たことがあるはず。 あと、キックスターターで資金調達して作った映画っていうのも、面白かった。カナダの誕生日、カナダデーに合わせて公開したのもよかった。きっと日本の「日の丸」の丸の大きさや色にも細かい指定があるにちがいない。 https://designcanada.com/
山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと
知人がいいと言っていたので読んだ。中川右介の本は、カラヤンのことを書いた『カラヤン帝国興亡史』を読んだけど、同じようなノリで百恵ちゃんのことがびっちり書いてあった。 これは山口百恵の芸能生活の話だけれど、当時の芸能界の攻防がすごい。芸能事務所やテレビ局が布石を打ち合っているので、作詞家や作曲家の隆盛もよくわかる。そんな環境ではパフォーマーは翻弄されやすい。ヒデキも背景にちらっと出てくる。著者の中川右介に西城秀樹のこういう評論を書いてほしい。ヒデキは亡くなるまで何年もの間障害者だった。でも、かつてのスターを、運動神経抜群だった人が歩行困難になったことをいじるような意地悪な報道が多くてうんざりだった。亡くなってから、そういうのが消えた。だから、ちゃんとしたプロの評論が読みたい。もうあるのかな? でもなんとなく、もうこの一冊であの頃の芸能界が語り尽くされている気がしないでもない。 ちなみに私は『蒼い時』を何度か読んでいる。私の中で「できることなら、あんなふうにクールでいたい」と見本にしていた女性は、山口百恵、阿木燿子、安井かずみだった。どれにも全然近くないし、全然クールになれないし、ただの憧れでしかないけど。
Brave New World
仕事用のサイトからの転載。 https://kyokonitta.com/2018/06/24/brave-new-world/ なんか、個人用とどっちでもいい気がしてきて、仕事用のサイトなんてわざわざ用意する必要があったんだろうかと悩み始めた。
最近読んだ本
『苔のむすまで』 杉本博司の写真は大好きで、写真集を何冊か持っていた(が引越のたびに紛失したか人に譲った)。彼の文章がこんなにもすばらしいとは知らなかった。レベルは違うけれど、私も古いものは集めるのも好きだ。この間日本に帰ったときに、親戚の家の裏に澄んだ小川が流れていて(しかも流れが速い)、どうして小川があるのかと聞いたら、「先祖が材木屋だったから」という返事だった。近くの大きな川から水路を自宅まで引いてきたのが今も残っているのだそうで。つい、そういうことに感動してしまう。 『ミナを着て旅に出よう』 半年に一度のセールをしたくない、という皆川明の意見に賛成。そういうことをしないブランドはあったほうがいいと思う。セールでないとなかなか買えない値段ではあるが。姪っ子はミナの端切れでスカートをいっぱい作ってもらったのに、「可愛くない」とか言っているらしい。3歳半にはまだ良さがわからない。 『薔薇いろのメランコリヤ』 いやもう、「ばら」や「バラ」でなく「薔薇」なのはわかるが、「色」ではなくて「いろ」、「メランコリー」とか「メランコリア」でもなく「メランコリヤ」なのはなぜだろう、とタイトルだけで疲れた。中身も疲れる内容だが、成功している人にくっつく人々の屈折した精神はよくわかる。だから、屈折した者どうしが惹かれ合うのもわかる。 わざとらしく糸切りバサミを写真に入れているのは、すごく気に入っているハサミなのに、小さいがために長い間紛失していたのを今日見つけたから。
