ロンドン日記 その21

気がつけばロンドンも残り二週間。

これは先日目の前で起きた地下鉄の衝撃的な出来事。

夜飲んだ後の帰宅の途中、地下鉄の電車に乗り込んだら、酔っ払ってぐったり座席に倒れこんでいる女が一人。異臭にハッとして彼女の寝ゲロに気付く。

「やだなぁ寝ゲロ。生きてるのかしら、この人」と教授に踏まないよう注意を促す。私の向かい側に座っている女がスマホを取り出し、寝ゲロの女に大胆にカメラを向ける。写真なのかビデオなのかはわからない。「撮るならもっとこっそりと撮ればいいのに」と思っていたら、案の定、若い女二人組がツカツカとやってきて、

「ドゥー ユー シンク イッツ ファニー?」

と詰問した。「具合の悪い人の写真とって、何がおもしろいんだよ、そんなもん撮ってんじゃねーよ」と。

でも私と同世代と思われるスマホの女はひるむことなく

「イエス。イッツ クワイト ファニー」

と負けない。しばらく三人は「具合の悪い人の写真とって、おもしろいの?」「ええ、そうよ、とても面白くってよ」と同じことを繰り返していたが、やがて二人組は呆れ返って遠巻きに様子を見ることにした。よほど腹が立っていたようで、イタリア語に切り替えてスマホ女の非難をしていた(私はイタリア語はわからないので想像)。

やがて一駅過ぎたところで二人組は降りる。スマホの女も降りた。降りたとたんにスマホの女もイタリア語で罵り始めた。やだー、三人ともイタリア語が話せる!!ホームで女の戦いが繰り広げられていた。20秒ぐらい。ドアが閉まったとたんに車内に残った男たちが「オオー!スゴかった」などと軽口をたたき始めた。

もう一駅過ぎると、今度は寝ゲロの女がむくっと起き上がり、ヨダレを手で拭いてフラフラと降りていった。何事もなかったかのように…

すごい!

私だったら絶対にカメラを向けないけど、仮に私がスマホの女の立場だったとして、自分の行いを公衆で突然あのように窘められたらどうするかなんて考えたらゾワゾワしてきた。

しばらく前ニットナイトでも、編み物している私たちを面白がって、勝手にカメラを向けて写真を撮った通りすがりの男がいた。それを見つけた瞬間、ニット仲間の一人が立ち上がって

「デリート ザット フォト!」

と男のほうを指差して、腹の底から大声で叱りつけた。そのときも私は咄嗟の彼女の行動に驚いた。まったく彼女の行為は正しいんだけど、私もそんなふうに言えたらいいんだけど、咄嗟には出てこないと思う。男は「てへ」と苦笑いして逃げていった。きっと写真は削除せずに、無礼な一言を書き添えてどっかにアップしたかもね。

自撮りを嘲笑う人は多いけど、自撮りのほうが無邪気でいいよね。

ロンドンで観た映画
The Imitation Game
ブレッチリー パークに一緒に行った仲間と映画を見た。とてもよかった。映画は事実にそんなに忠実ではないけど、映画として面白くするにはあれでいいよね。でも最初の暗号解読はポーランド人がやったのだから、ちょっとポーランド人が気の毒。

Gone Girl
面白かった。あれに近い操作巧みな女は結構いると思う。

Maps to the Stars
お・気・に・入・り

ロンドンで観たミュージカル
Sunny Afternoon

教授が「ロンドンでミュージカル観たい」というのでロンドンでしか観られなさそうなものを探した結果がコレ。

The Kinksのデビューから、アメリカ閉め出し食らって、立ち直る(?)までのストーリー。若くてピチピチした役者が本人たちそっくりな格好して歌っているから、ミュージカルというよりモノマネ・コンサートの色合いが濃かったが楽しかった。曲の順番もちゃんとバンドの成長(?)に合わせてある。昼に観たから白髪率が高いのかなと思っていたが、リアルタイムでThe Kinksを聞いていたファンが多かっただけだった。

2 thoughts on “ロンドン日記 その21”

  1. スマフォの普及とセルフィー流行りのおかげで、多くの人がことわりもなく他人を撮ることも悪いことと思ってないよね。私は非常に不愉快になるし、初めてそういう目にあった時はびっくりした。やめてよって言ったけど。そしてたぶん相手は何が悪いのかわかっていない。そこがいちばん問題。

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  2. 私はこのニットナイトのとき以外に気がついたことないけど、勝手にあからさまに撮られるのは嫌よね。
    最近自撮り用の長い棒を持ってる人がとても多いけど、実はアレが嫌い。

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