「はりおんな」じゃないよ。
「しんみょう」と読むのよ。妖怪の一種じゃないの。ホラ、著者が有吉佐和子先生だからさ。知らなかったけどこれも戦争がテーマ。でも戦場の話ではなく銃後にいる人々の話。
戦時中の東京の下町で、縫い針を踏んづけてしまって片足が不具になり、悲しみに心を打ち砕かれそうになっても、戦争挟んで手縫いからミシンへ、和裁から洋裁へと、ただひたすら縫い物をする女が主人公。
なんかわかるな。手を動かしているととりあえず安心するから。難しいことをやっていなければ、頭は冴えてるから、いろいろ考えを整理できるしね。編み物だってそうだし。
針を踏んづけると体内で針は進んでしまうのかしら。ありえない気がする。調べてみたけどわからない。ま、そういうことにしておこう。この小説の中ではそうなってしまうんだから。
話後半の終戦を迎えた後の喪失感が怖い。前線で血を流し倒れていく人々の描写はないけど、銃後を守った人たちや、復員兵の喪失感が描かれている。精神に異常をきたしてしまう人もいれば、新しいものへと適応し立ち向かえる逞しい人たちもいる。その新しいものへの挑戦が、和裁の平面裁断から洋裁の立体裁断だったりするので、手芸好きには合点がいくけど、そうでなければ地味すぎてわかりにくいかも。
でも私が最近調べていることにわりとぴったんこな話だった。

