若き数学者のアメリカ

去年何冊か藤原正彦の本を読んだときに、周囲に薦められた本。1970年代の体験記なので多少の古さは否めないけど、異国・異文化の咀嚼と吸収に行動力と考察力の両方をフル回転させている著者がスゴイ。前半の突っ走っている箇所は面白可笑しいけど、ただの留学体験と変わらない。実は大学の教授陣の対立を描いた箇所が秀逸。

どの職場、人間関係にもいえることだと思うけど、自分の正しさを主張することは大切なんだけど、それに拘泥すると、不器用だと見なされ、最終的には協調不可能となってしまう。そういう状況の周辺にいる人たちにも腹の中の計算というものがある。突っ走るか、妥協を図るか、どの程度の妥協か、と大人の選択を自分で決めることが必要になるけど、渦中にいるときにうまくバランスをとるのは難しい。私自身にも苦い経験はいくつかあるけど、どういう結果になっても、最終的に修羅場をくぐり抜けた後に、未経験の状態の自分よりは経験した後の自分に深みは出たんではないかとは思う。あと、「アメリカ」という特殊な社会への帰着点の筆者の模索ぶりも、アメリカで長年暮らしたことがある私にはよくわかる(特に職場での)。

自分語りになってしまうけど、アメリカからカナダに引っ越したとき、アメリカに移住したときに体験した新天地に慣れるための模索をしたという前体験があるのと、英語力がアメリカ移住当時からみると飛躍的に向上しているので楽だった。ただし、藤原さんが体験したミシガンの冬のように、カナダの冬も同様の結果を私にもたらした。在カナダのフィンランド人の友人も同じことを言っていた。長い冬には要注意!

最近、MBAというのはコネを作る場である、という話を人とすることが多い(それだけではないけど)。大学側もはっきりそう謳っていることも多い。日本だと、コネという言葉から腹黒いイメージを連想することもあるし、薄っぺらなコネを豊富に持っている人のコネ自慢に辟易することもあるし、コネ作りは学問ではない(学問ではないんだけど)、とか何かと後ろ向きなイメージのあるコネ。しかし「人脈」と考えると、自分がやりたいと思っていることができそうな未踏の世界へ進むにあたり、突破口的な役目を果たすのは「人脈」。それを少しずつ積み上げていく様子も、実は克明にこの本に書いてある。

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