ロンドン日記 その15(ST IVES)

セント・アイブス (St. Ives) という、グレート・ブリテン島のイングランドの部分の南西に突き出した半島の先端にある小さな町へ一人旅。ロンドンからはパディントン駅からセント・アースまで行き、一回乗り換え。電車で数時間かかる。セント・アースからセント・アイブスまでは約10分の道のりだけど、潟というのか湿地帯の横に線路が敷かれているので景色が面白い。

セント・アイブスはイギリスに長期滞在するなら是非訪ねてみたいと思っていた場所なので、ニット・ナイトのときに「行こうと思ってるんだなぁ」と言っていたら、誰かが「寝台特急があるよ」という。これで一気に気持ちが盛り上がる。何でも一応は口に出してみるもんだね。いろいろ考えて帰路を寝台にした。往路は景色を楽しむため昼間に出発。この日は大雨に見舞われ、悪天候に突っ込むかたちで旅に出た。しかし、セント・アイブスに着いた翌朝は快晴!滞在中も寝ている時間に雨が激しく降り、私が出掛ける頃には晴れ上がっていた。私はやはり雨女ではないのかも。

ロンドンもいいけど、来てみてよかった。日本でもTOKYOと地方の小さな町とでは生活が違うのと同じで、ここも夏だけ賑わう、のんびりした町だった。10月半ばとあってシーズン最後。老人が多かったけど、この町は坂道が多いので平らなところで彼らはのんびりと海を眺めている。坂の上、丘の上に行けばほとんど人はいない。

セント・アイブスは、カリフォルニアのモントレーに似ている。砂浜あり、岩場あり、崖もあり。春先には崖にピンクの花が咲き乱れるというから、ますますモントレーのよう。砂浜はかなり遠浅のようで、引潮のときには驚くほど波打ち際が遠ざかる。午前中は港だったところが午後には砂浜になっていて、その上に小船がゴロゴロ。


町は全体的に小高い丘の上にあり、町並みはとても美しい。細い路地を歩けばどこからともなく潮の香りが漂ってくる。見晴らしのいい場所に行けば、見えないけど海の向こうにはアイルランドがあるんだな、なんて思うと胸がきゅんとする。


しかし三日もブラついていれば丘に並ぶ素敵なコテージはみな夏の休暇用の「賃貸物件」だと気付いて旅情がやや冷める。既に夏は過ぎ去っているので、コテージに人が住んでいる様子はない。なんだぁ… 夢の世界のお姫様のドレスの下から、キツネの尻尾が出ているのを見てしまったかのような気持ちに少しだけなる。ここは騙されておくことにしよう。三日だけだし。

宿泊先のゲスト・ハウスは丘の上。急な坂を登らなければならないけど、丘の上に立てばとても素敵な海の景色が待っているし静か。(サンフランシスコに住んでいたことのある人には大したことない坂道)そしてこの丘をさらに登ったところに、バーナード・リーチが仲間と開いた「リーチ・ポタリー」という窯がある。セント・アイブスは、日本の民芸運動に深い関わりのあるバーナード・リーチが亡くなるまで住んでいた町。去年訪ねた島根の諸々の窯元も彼の指導を受けている。民芸運動について本を読んだり、人から話を聞くのが好きな私は、これがこの町訪問の目玉だった。でもこれについてはまた後で書こう。

一人でよかったと思ったこと

1 朝の海岸を散歩したこと。私は朝の海が一番好きだね。

2 好きなところで好きなように写真が撮れたこと。

3 セント・アイブス産のカニを一パイ、丸ごと一人で食べたこと。相方の目の前で、カニの手足をバキバキ折って、カニミソをなめたりすると嫌がられること間違いなし。私は「骨付きの肉は怖くて食べられない」と言っているのに、シーフードとなると別なので「ダブルスタンダードな女」と非難を浴びる。だからカニを一人で食べたことはとてもラッキーだった。セント・アイブス産のムール貝の酒蒸を前菜で食べていたため、カニを全部食べ切ることができなかったのが悔やまれる。カニよりムール貝が美味だと私は思った。セント・アイブス産のアジもおいしかった。ソースが選べる店だったけど、日本食に飢えていた私は「塩焼き!」で注文。塩焼きにしてもイギリスだと塩が足りないことが多いので、余分に塩をもらって食べた。ちゃんと皮をパリっと焼いてくれた。さすがは海の町!

4 地元民とざっくばらんにどうでもいいような軽い話で盛り上がれたこと。とあるカフェでは私しか客がいなかったため、お店の人と「賞金10万ポンド」のクイズ番組(Who’s On Heart 2014)を一緒に聞いた。

5 自分の部屋でワイドショー的なテレビ番組をいろいろ見たこと。

お目当ての「リーチ・ポタリー」と寝台列車についてはまた次回。

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