これもオスカー授賞式までに見ようと思って見られなかった映画の1つ。 機内で1回見て、寝て、また起きてもう1回見た。会話のテンポが速くて、情報量がいっぱいだったし、2回見ても飽きなかった。あまりにも面白すぎたので原作も読みたい。主役がジェシカ・チャステインだったから面白かったのか? 「この人、ケビン・コスナーのように見えるけど、そうなのかな?」と思うぐらいにケビン・コスナーが太っていた。太った体にケビン・コスナー似の顔が乗っている、と言えば、私の違和感が伝わるだろうか…? 気持ち悪目のセレブ役のマイケル・セラもよかった。 映画は、いわゆる「毒親」との関係から生まれた亀裂を克服する話になっていた。何でも一番でないとだめ、というプレッシャーを跳ね除け、競争心の激しい人間になるが、実は…… という話がものすごいスケールの大きな文脈(賭金が馬鹿高いポーカーゲーム)で語られている。原作の本読もう。 https://www.imdb.com/title/tt4209788/
Author: Kyoko Nitta
旅路
先に『流れる星は生きている』を読んで、その内容を忘れかけた頃にこっちを読んだ。藤原正彦の母、藤原ていの半生記だけど(どっちも)、北朝鮮から日本に帰国した後に彼女が選んだ女としての生き方も、こっちには書いてある。壮絶な体験をしたら後は楽、などということはなく、一生通していろいろ悩ましいことが次から次へと起きる。夫よりも稼いだ妻の立ち位置の難しさだとか、現代の女性にとっても悩ましいことが書かれているのが印象的だった。 青年期の藤原正彦の傍若無人ぶり(と言ったら失礼かな?)がちょこちょこ出てくるのも面白かった。 古本を買ったら、後ろにこんなハンコが押してあった。私もかつては自分の本に埴輪や猫のハンコを押していた。変なハンコが押してある本を見かけたら、それはきっと私の…… 本の内容と関係ないけど、ブッククラブに行ってみた。「参加表明したら絶対来てね」的なプレッシャーを掛けられたし、白黒映画の仲間に「ブッククラブって、主催者の話をダラダラ聞かされるだけのとこもあるよ」と脅されたのであるが... お題の本は半分しか読んでない状態で行ったけど、とても面白かった。女性限定のグループ。主催者は慣れているのかきっちりしてて、本について話し合いやすいようにいろんな質問を用意してあった。 仕事をしていても女の人は小説を読む人が多い。そして、小説についてあれこれ話し合うのが好き。「えー、私はそんなふうに読まなかったけど」と言われてカチンと来るような面倒くさい人もいなさそうで、初参加の私でも参戦できた。全部読み切ってきている人がほとんどなのもよかった。 発言内容から察するに「あ、この人、ウィキペディアしか読んでないな」という人もいた。何事に関してもウィキ的な話ししかしない人はいるもの。こういう人をウィキ的参加者とこれから呼ぼう。でも、人数多めだったので人の話しているのを聞いているだけでも全然オッケーだったし、また来月も行ってみたい。
HUSH MONEY
トランプ政権ネタで、個人的に今面白いと思っているのは、トランプ個人が雇っていた弁護士が払った(ということはトランプが命じて払ったのではないかと言われている)「口止め料」の金額。 トランプタワーのドアマンと、浮気相手のポルノ女優にそれぞれ別件で口止め料がずっと前に支払われていた。この金額が安かったから、ふたりとも口止め料を受け取っておきながらバラしているのかな、と最初は思っていた。 でも、ふたりは口止め料を受け取るとともに、「これをバラしたら百万ドルの罰金を払う」という同意書にもサインしている。この罰金の金額も、個人が払うには高額だけど、彼らをサポートしてくれる人たち(民主党とか、ちょっとした金持ち)なら、ささっと払ってくれる「安い」金額だ。だからバラしたのかな、と今は思うようになった。 この手の秘密を守るか守らないかは、口止め料への満足感もさることながら、「罰金が怖いから守る」という脅しが効いているかどうかが重要なんだなと改めて思った。罰金を肩代わりしてくれる人がいれば、怖くはない。むしろ、罰金肩代わりしてやるからバラせ、という脅しのほうが効いてくる。
Isle of Dogs
オスカー直前、映画館に足繁く通っていたときに散々これの予告編を見ていたので、なんとなく「もう見た」気になっていたけど、面白かった。かわいらしさの中に今の政治問題が盛り込んであるのも(わかりやすいけど、わざとらしくはない盛り込み具合がよかった)、声優たちが豪華なのもよかった。 ウェス・アンダーソンといえばミニチュア、という図式が私の中にはあって、勝手に「仲間意識」を持っているので、何をしても手放しで喜んで見てしまう。 http://www.imdb.com/title/tt5104604/ 犬の鳴き声は日本語で「ワンワン」最近読んでいた本の中に、中国の荒野を駆ける犬(?)みたいな動物を「王」(ワン)と呼ぶとあり、ひょっとしてワンワンは「王王」なのかもしれないと思ったが、ネットで調べたわけでもないので、誰か教えて。
マチネの終わりに
読まず嫌いだった…… よかった。設定のせいで在外日本人にはどことなくしっくりくる(こない人もいるとは思うが)。こんなに何もかもが密接につながっている現代だけど、時差や同じ空間にはいないせいで「すれ違い」が出てくるところとか、主人公2人の「意識」が彷徨っている「場所」がどことなくグローバルなところが。アメリカ人の知識層の描写にも現実味があった。あっという間に読んでしまった。 すれ違いが切なく書かれているところがよかったな。プラトニックな関係なのに、頭の中でごちゃごちゃこねくり回している感じも現代っぽい。きれいすぎて、絵に描いた餅的な高尚な恋愛っていうのも、非日常感があって楽しめた。ストーリーに感化されてアンドレス・セゴビアの曲流しながら読んだ。 本とは関係ないけど、トランプ大統領の下半身騒動(もはや下半身どころか、政治を揺るがしているけど)の相手の1人、ポルノ女優のストーミー・ダニエルズが気に入った。60ミニッツのインタビューを何回も見てしまった。堂々としてて、どんな質問にもハキハキ答えて、内容がとても面白かった。私は笑いながら見た。今は辣腕弁護士がついているので政治的にがっちり固められているけど、そこんとこよりは、「#MeTooと一緒にしないで。まがりなりにも私はAV界の女優なんだから」と言っているところがとても面白かった。女の「性」を売ってるけど、自立してるし、自分のことは自分で守るし、言いたいことは言わせてもらう! という「おばちゃん」精神がスカっとしてよかった。聞き手のアンダーソン・クーパーも「(トランプ氏は)コンドームは着用してたんですか?」と突っ込むところがすばらしく、「未着用!」と堂々と答えているところには拍手した。だって、当時27歳だったから、ガキじゃないもの。 トランプの女性の好みは一貫していることにも感心。イヴァナも、メラニアも、ただでは起き上がらない強さを持ってると思うから、外見だけでなくって「跳ね馬」っぽい性格の人が好きなんだろうな… でね、ニューズウィークのこの記事は残念ながら間違っている。「セックス中にトランプが『君は娘に似ているね』と言った」のではないよ。あのインタビューではそんなこと言ってない。そういうことになる前に、ホテルの部屋でおしゃべりしてるときにトランプが「あんた、うちの娘みたいに、ちゃんとはっきりものが言える子なんやね、気に入った」と言っただけ。ふたりの会話の翻訳も悪意のある翻訳のように聞こえる。まあ、今更、そんな細かいことはどうでもいいが。 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/post-9819.php
12 Angry Men + To kill a mocking bird
「12 Angry Men」 ヘンリー・フォンダは別に好きでも嫌いでもない。この映画では正義感満々そうな役で、全体的に説教臭い話だったらいやだなと思っていたところ、老婆心の芽生える年にもなると、いろんなことが見えるようになり、結構堪能できた。 グループで見に行ったので、その後、パブになだれ込み、陪審員が男ばっかりなのに、あの部屋には「女子トイレがあった」と主張する人がいて大騒ぎになった。男子トイレのシーンはあったけど、女子トイレがあったかどうか私は覚えていない。この映画が製作された頃のアメリカには、女性陪審員は存在せず、いつから女は陪審員になれたのかは州によっていろいろ違うので揉めた。 こういうときデジタルネイティブ世代なら、さっさとスマホを出して検索するのだろうが、いかんせん、定年退職して○年、という人もいるメンバーではスマホがなかなか出てこなかった(そんな人もスマホは持っているけど)。 「To kill a mocking bird」 好きな映画なので何度か見ているけど、細部を忘れているので毎回新鮮。最後に登場する近所の「危ないお兄さん」は今で言うペドフィリアの傾向のある人ではなかろうか、と思って、それはそれでゾッとした。この映画が大好きだという人は多くて、「絶対にハリウッドにリメイクしてほしくない!」と言っている人もいる。私は、リメイクするなら、やっぱりこのペドフィリアのお兄さんをしっかり料理してもらいたいと思う。 どっちの映画も「法廷ドラマ」だけど、今の法廷ドラマと違ってペースがのんびりしてるよな。 最近モノクロ映画のグループに入った。新メンバーの私は、みんなに名前を忘れられ「ヨーコ・オノ」と呼ばれている。「人種プロファイリングだ!」と抗議したけど(冗談で)、「実はヨーコにはキョーコという娘がいるからいいのだ」と言われた。本名をちゃんと覚えているなら、本名で呼んでもらいたい。が、年寄り相手にこれ以上言っても仕方がないので放置してある。グループには若い子もいるけどね。 メンバーのひとりが車椅子に乗っていて、いつもTTCのWheel Transに乗ってやってくる(障害者用の公共交通サービス)。映画を見た後、ビールを一緒に飲み、またそれに乗って帰っていく。トロントのこういうサービスはいいなとよく思う。
おらおらでひとりいぐも
東北弁で書かれた話だから、感想を自分の方言で書いてみる。 ありがたいことに友達から借りて読んだんさ。 東北弁の部分もささっと読めたし、自分が生まれたときから馴染んどる方言で話すほうが、自分らしくなれる、っていうのはようわかる。今は英語圏に住んどるから、普段英語で話しとるけど、英語のほうがはっきりものが言えるのは、自分と切り離して言えるっていうのもあるし、日本語の難関である敬語をバイパスできるのもあるし、日本語を話すときの方言をしゃべらずに標準語をしゃべるという不思議さも回避できるからかもしれやん。 家族のために生きることが自分の存在価値になっとる年を取った女性がひとりでぶつぶつつぶやいとる話やけど、つい最近、『12 Angry Men』を劇場で見たんさ。あの12人の男たちも、善悪の判断をするときの、ひとりの人間の脳内の神経細胞に見立てられるな、とこの本を読んでから思った。
Red Sparrow
UKでロシアのスパイが殺されかけて大騒ぎになっているなか、とてもタイムリーな内容! というわけで観に行った。ひょっとしてジェニファー・ローレンスがボンドガール的な役回りでがっかりするかも…… と思っていたら、全然そんなことなかった。よかった。 とにかく話の筋がややこしく、たとえ英語が母国語の人でも何が何だかわからなくなる。混乱したまま「まあでもジェニファーの裸が見れてよかった」とお茶を濁して帰る人たちもいれば、私たちのように、こんがらがった糸を解くため、その後パブに行って話し合う人もいた。 ビールを頼むのも忘れてしまうほど、一体何がどうなって、誰が誰を裏切っていたのか、整理するのに40分ぐらいかかった。 同じ店に、同じ映画を見て、同じように映画について話し合っている人たちが何組かいて、ロシアがどうのこうの、CIAがあーだこーだ、と会話が漏れ聞こえてきた。 普通の暴力と性暴力が満載でリラックスして見る映画じゃないけど、内容が古臭めで面白かった(個人的に近未来的なものより、こういうもののほうが好きだから)。バカバカしくて吹き出してしまうシーンもあったしな。 http://www.imdb.com/title/tt2873282/
TJWK 7周年
フェイスブックでは去年年末に報告しましたが、2017年度もトロントからはカナダドルで$250、あしなが育英会へ、東日本震災孤児のために寄付をいたしました。いろいろな形でご支援いただいた方に改めてお礼申し上げます。 今年は、7年目の日に私の都合がつかなかったのでニットの集まりをしませんでしたが、またぼちぼちやりたいなと思っています。親戚が新しく増えたので、その子にTJWKのブランケットをプレゼントしました。 去年、福島第一原発の廃炉に向けての現状をレポートする専門誌の記事を翻訳しました。細かく調べないと翻訳できなかったので、いろんなものを読んで勉強しましたが、ぞっとするばかりでした。「見たくないものにはフタをする」ことはできても、「フタをしたくてもできないものがある」という気持ちになりました。某国の政策に関わる人たちが利用するシンクタンクが出している、原発を「廃炉」という視点で見るとこういう難しさとコストが出ますよ、という内容を時系列に手短にまとめたとてもわかりやすいレポートでした。 3月11日の英語のロイターのニュースは(たぶんロイターだったと思う)、福島第一原発の汚染水を貯めたタンクがぎっしりと並んでいるところを空から写した映像を流しつつ、そのタンクを置く場所の確保の問題と、凍土壁の工事の様子を伝えていました。
Lady Bird
オスカー授賞式は終わったけど、余韻冷めやらぬうちに見ておきたかった映画を観る。昼間ずーっと家に篭って仕事しているので、夜の遅い時間に映画館に行きたくなるだけのことのような気もするが。 カリフォルニア州の州都なのに馬鹿にされるサクラメント。州外に出ていって、サクラメント出身と言ってもわかってもらえないから、つい「サンフランシスコ出身」と言ってしまう、まっ平らな町サクラメント。だけどだけど、別に嫌いじゃない町、サクラメントの話。 http://www.imdb.com/title/tt4925292/ 後ろに、主人公に感情移入しすぎて、映画の話を先取りしてコメントするおじさんが座っていて、 主人公が合格通知らしき封書を開ける前に「合格だ」とか、母親と主人公が喧嘩しているときに「そうだ、数字を言え、数字を!」とか、親友を裏切りそうになる主人公に「あかん、それはあかん!」とか言っていたので、若干感動が薄まった。 ああ、若いって恐ろしくバカ。でも自分も同じぐらいバカだった。 観衆も若さを持て余している女の子を応援しながら笑ってみてるところが、映画よりもよかったかも。でも割と好きな話だった。監督の女の子も好き。 この映画にも「Call me by your name」の若い男の子が出ていた。オスカー授賞式を一緒に見ていた友たちが「Call me by your name」を見ていなかったので、「誰これ? なんて美しい子なの!」と喜んでいた。 オスカーを見ている間、「あ、この人好き!」「このドレス、チャイナタウンで10ドルで売ってるビーチドレスにしか見えない」とか散々なことを言って楽しんだ。時々、「あ、あの人知ってる? あの人あの人! あの人好きなんだよね。あれに出ている人! あの人と結婚している人! うーん、あの旦那さんの名前なんだったかな」などという会話になり、全員スマホを片手に持っているのに、検索ができない事態も頻発…… やっぱりオスカーナイトはいいねぇ。
