Fahrenheit 11/9

マイケル・ムーアの新しい映画。もう彼の名前を聞いただけで「嫌だ!」とアレルギーを起こす人もいるけど、私はどっちでもない。話題になるから見に行くし、彼の言いたいことにも一理ある(......と私は何をいちいち言い訳しているのだろうか)。 11/9はトランプ大統領が選出された日なので、映画はあの大統領選のシーンから始まる。銀幕越しにあの選挙は振り返ると、笑っちゃうけど、もう振り返りたくない。 結局、普通の暮らしをしている人たちが「解決して欲しい」と望んでいる問題は、どっちの政党が政権をとっても解決しないから、怒っている人たちの話。私が、この映画に取り上げられている町のどこの住民になっても怒ると思う(銃撃事件が起こったフロリダの高校生たち、ミシガン州フリントの住民、ウェストヴァージニアの小さな町の住民など)。それに現状打破を計って努力する人たちを応援したい気持ちはある。 映画のタイトルが前作の『Fahrenheit 9/11』をもじってるので、新潮社も『新潮45』を休刊にしたのだから、新しく『新潮54』に生まれ変わって、また世間を騒がせてくれたら面白いのに、と思う。私はたまにしか読まなかったけど、好きだった人には気の毒ね。

US OPEN 2018

USオープン女子決勝戦をちらっと見て、もらい泣きをするほど楽しんだ。日本の人はやっぱり大坂なおみの優勝を喜んでいる。それもよかったけど、どっちかというと、セリーナ・ウィリアムズが決勝で審判と繰り広げたドラマを楽しんだ。彼女はインタビューでいろんなことを訊かれても賢いことを言うし、嫌な質問をかわすのもストレートで好き。NFLのコリン・キャパニックのNikeのコマーシャルについてコメントを求められたときも上手に対応していた。 そもそもフレンチ・オープンでピッチピチのウェアを着ていたのに、USオープンではチュチュみたいなウェアを着ているのも面白かった。 私は、欲しいものがあるならグイグイとそれを勝ち取りに行く人たちに共感してしまう。ストレートで見ていて気持ちがいい。それに何より、決勝ではフラストレーション全開だったので本当に面白かった! だんだん審判へのしつこさが増していくにつれ、「なんかすごいことやらかしてくれそう!」と期待が高まった。みんなが見てる前で暴言を吐いて、みんなが見ている前でペナルティ! 気持ちがいい! 最後の表彰台ではちゃんとブーイングを制して大坂なおみを立てる姿も好感だったし、試合後の記者会見もよかった。「私は何度も勝っているから、姑息なマネをしてまで勝つ必要はない」とか、「自分の子どもに今回の試合の行いについて訊かれたら、なんて説明しますか?」と訊かれて、むっとしたように一瞬見えたのも面白かったし、最後に「私は女性のために戦ってきた。強い気持ちをもった女子が強い言葉を発しても罰せられないことを望む」と涙を堪えているのも好感が持てた。彼女のすることに同意するかどうかは別にして(というか彼女は別に他人からの承認を求めてはいない)、彼女はブレていない。 審判に向かって「泥棒!」の暴言は、日本の女性議員が「このハゲがー!!」とパワハラしているのを録音されているのとは次元が違う...... あともう1つ、全然話が違うけど…… 大坂なおみが準決勝に進んだ時点で、「伊達公子以来!」と騒がれていた。1995年に私が渡米したとき、伊達公子は世界ランキング4位だった。その頃、海外からアメリカに留学する女子学生対象の奨学金を見つけ、なぜアメリカで勉強したいのかを書いて提出しろと言われた(研究者への奨学金とは全然レベルの違う、遊学する女子への奨学金なので)。世界ランキング4位の伊達公子を引き合いに出して「私も彼女みたいにがんばります」みたいなことを英語で書いてアメリカ人の友達に見せたら、「奨学金がほしいのはアンタなのに、伊達公子を褒め称えてどうすんの?」とダメ出しされた。そして奨学金はもらえなかった。今回のUSオープンで、そんな昔のバカ丸出しの自分を思い出した。

人間の條件(映画)

3部あるうちの一番最後を、白黒映画の友達(おばあさん)とふたりで見に行った。彼女はこの日、「大変です、あなたの銀行がハッキングされましたので、口座番号を教えてください」と詐欺に遭い、口座番号を教えてしまったのである。「詐欺かな?」と呑気なことを言っていたので「詐欺だよ」と答え、「明日、朝一番に銀行に行かないとだめだよ」と励ましつつ、私がこの歳になった頃には一体どんなテで騙されるのかと想像した。年金生活の高齢者からお金を巻き上げようとするなんて!とプチ憤慨した日に『人間の條件』 3時間半に及ぶ上映時間の後、ふたりでお茶していたら、 「日本兵の着ていたあの軍服見たことないわ」 と言うので、白黒映画グループの人だし、この映画は前にも見たことがあると言っていたので、ひょっとしてものすごい軍服マニアで、映画の中の軍服が忠実じゃないとか言い出すのだろうかと思っていたら、 「あれって第二次世界大戦?それとも第一次?」 と訊かれ、彼女の脳内では歴史がごちゃごちゃになっていることが判明。恐る恐る「第二次世界大戦…」と答えると、 「日本はどっち側だったの?」 とさらに訊かれ、彼女が軍服マニアではないことが決定的になった。まあ、今日は詐欺に遭ったことだし、歴史については訊かれるまで、こちらからはこれ以上何も言わないことにしていたら、 「主役(仲代達矢)がカッコいい。名前教えて」 と言われたので、何度も「タツヤ・ナカダイ」と言ってみた。しかし「エ?ナンテ?」と届かないので、スマホを取り出し「tatsuya nakadai」とテキストを打って送ってみた。おばあさんは、自分の携帯をカバンの中から取り出すことなく「サンキュー」と言って終わった。 しかし、このおばあちゃんの感想のゆるさが好き。これが身内だとそうはいかない。

シカゴ詣

今年もシカゴ詣。1年ぶりのダウンタウンは少し変わっていたし、去年より2週間早めに行ったせいで蒸し暑く、歩きづらかった(日本から来た人には涼しく感じるかもしれない)。 何が変わったって、新しいアップルストアがシカゴ川沿いに完成していたし、その横ではシカゴ・トリビューン本社ビルが改修中だった。おまけに今年マクドナルドの本社がシカゴに移転し、ダウンタウンの巨大マクドナルド店(前は「ロックンロール・マクドナルド」という名前だった)が環境にやさしい建築に生まれ変わっていた。今はまったくロックンロールしておらず、草食系な内装になっている。食べ物のメニューは相変わらずだが、熱帯雨林保護認証のコーヒー豆を使っていたりする。しかし、前の店舗にあった巨大な黄色いM字型のブリッジが私は好きだった。それが新しいエコフレンドリーなマクドナルドから消えていた。 店長っぽい人にブリッジの行方を聞いてみた。 「捨ててないわよ、きっと。本社のどっかにあると思う。本社の人に聞いてみれば?」 この本社では世界のマクドナルドで売られているご当地バーガーが食べられるらしく、店長イチオシだった。車がないといけない場所だったから、いかなかったけど。ハンバーガー大学というのも本社にあるらしい。 ... でも、ちょっと行ってみたい。次だな、次!  後は、いつものようにシカゴ美術館のミニチュアルームで過ごし、建物を見て回り、ミシガン湖の湖畔を散策し、ユークレニアン・ヴィレッジでご飯を食べ、House of Blues に行き、ヘンリー・ダーガーの部屋を見に行った。 今回はミッドウェイ空港着のフライトだった。空港付近にある貨物広場が筆舌に尽くしがたいほど巨大で、私が乗っていた飛行機の高度からでは全体写真が撮れなかった。 気に入った風景 私が行く前からシカゴで銃撃事件が多発していて、ある週末だけで50件とか半端ない件数だった。私達がいた週末も20件ぐらい発生していたらしい。しかし、それはダウンタウンからは遠く離れた場所のこと。観光客がうろうろするところは至って平和だった。

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CRAZY RICH ASIANS(映画)

カナダでは8月15日に劇場公開。金曜の夜早速見に行こうとしたら、ダウンタウンの映画館は軒並み売り切れで、結局ヤング&エグリントンのシネプレックスのVIPで見た。ここのVIPはダウンタウンの他のシネプレックスよりいい!椅子がリクライニングするし、足も休められる。ほとんど寝転びながら映画が見られる。映画館はもちろん若いアジア人の女の子だらけで、キャーキャーいいながら見ていた。 シンデレラストーリーなのだけど、シンデレラは餃子大好き、美味しいものが食べられるならどこへでも行く、麻雀が得意。最後のドカーン!(ファンファーレ)はわかりきってはいたけど、ストレートすぎて気持ちがいい。若いときのドリュー・バリモアを思い出したぞ! シンクロのお姉さんたちに笑う。そして、エンドロールの曲…… アイウォナ・マネー!マネ、マネ、マネー! 楽しかった! が、エンディングは本とぜんぜん違う。 2013 年に原作を読んだ。げんなりするアジアっぽさもあるけれど、アジアを牽引する超富裕層の生活が書いてあり、それがあまりにもおもしろすぎ、特にシンガポールに住んだことのある人たちにオススメしまくっていた。 本についてもブログっていたからここに貼っておこう。 https://yaplog.jp/bunnybon/archive/2143

岩盤浴

ほんの少し遠出をして、命の洗濯をしてきた。あるところに岩盤浴のできるところを見つけ、淡い期待を抱きつつ予約を入れてGO。 アジアチックな甚平のような服を渡されて一気にテンション下がる。洗濯板でゴシゴシと、本当に命の洗濯をしてしまいかねない服だった。 デトックスしたい!と思っている熟女にあるまじき野良の格好で岩盤へ案内され、「まずはお水をどうぞ」と差し出されたのが、プラスチックのお椀。ええ、あのお味噌汁やおすましを飲むためのお椀…… 昔はフタ付きだったようだがフタはもうない。リッチな気分に浸るはずが……レモンやライムのスライスが入った水がグラスに入って出てくるシチュエーションでお椀はないよな!!  そして岩盤浴。岩盤、ガンバン、石はどこ? 悪趣味なキッチンカウンタートップのような、確かに石ではあるかもしれないものの上に寝転がる...... が熱くない。ある程度は熱い……最近また太った私の心臓にはこれぐらいの温度がよいのかもしれない。ヒデキもサウナに入った後に脳梗塞で倒れたし…… 悶々としているうちに、水の入ったお椀をひっくり返してしまい、岩盤とともに濡れる。 普段私は「どこもかしこもインスタで盗み合ってて、おもしろいものがない!」とぼやいているが、この日ばかりは「少しはインスタで勉強しろよな!」と思った。 翌日、スパから「いかがでしたか?10段階評価で10がベストなら、どのぐらいの点数をつけますか?」とメッセージが届く。 マイナスよ! マイナス! マイナスって選択肢はないの? ……結局すべてがありえなさすぎて笑い転げ、結局命の洗濯達成。 思い出になるものを買おうと思って、誕生石のトパーズを買って、お供え。

炎上&ベニスに死す

『炎上』 昔「やっぱ、名作は読んどかなきゃ」とティーンエージャーにありがちな知識欲に燃え、三島由紀夫や夏目漱石などをせっせと読んでいた。そうすると、友達のお母さんが若い頃に読んで感銘を受けた本だから、とまたいろんな本が回ってきた。そういう時代に『金閣寺』を読んだ。当時京都に住んでいたし、京都独特のおどろおどろしさに人間の闇を見るような気がしたものの、いかんせん、ぼんやり系であった私にはわからないところが多かった。 これは、今で言う「Incel」の話ではないかしらん。 若かりし日の市川雷蔵のドアップを見て、今の日本の俳優にはあまりこういう顔の人はいないよな…… と思いながら見ていた。老師の化粧水も映画ではずいぶん思わせぶりだった。フツーのサラリーマンが化粧水を叩くのが当たり前の時代だと、ああいう演出はスルーされかねない。 金閣寺への恋愛にも似た愛、炎への愛、病んでいたお父さんへの愛、老師からの愛を試すねじれた愛、お母さんに対する毛嫌い、小説を読んだときにはうすらぼんやりにしかわからなかったことが、今はもっとよくわかる。自分の成長が確かめられた気がした。 『ベニスに死す』 例の美少年もさることながら、上流階級の人々のドレスや帽子、高級ホテルの内装や小物、景色がすべて美しい。 やや乱暴に浜辺で戯れる少年たちのボーダーの水着姿が助平心をくすぐるけれど、それすらも美しい。 老いた人が心を奪われるほどの美しい若さを延々2時間。 偶然隣の席に、白黒映画の仲間が座っていた。常識に照らし合わせると彼女は「後期高齢者」に仕分けられる年齢だと思う。 「私はね、1971 年にこの映画が劇場初公開されたときに見に行ったのよ。死んだ亭主と!」 私は泣きはしなかったけど、髪染めの染料がドロドロと流れ出るシーンを見て、自分が生きてきた時間の重みに胸がキュッと締め付けられた!! 映画館から帰ってきて以来マーラーの交響曲をずっと流しているぞよ。

TERRACE HOUSE

今、NETFLIXオリジナル版の「テラスハウス」にはまっている。日がな流し見ている。この間軽井沢編を見終えて、今東京編。いやぁ、軽井沢編は素朴だったなぁ、と比べて思う。「The Hills」以来、この手のリアリティ番組は見ていなかったので、周囲が受け止めきれないほど私のテンションは高い。英語字幕もかなり楽しみ。 自分の人生振り返ってみても、できたらあんまり思い出したくない時期を、こういうリアリティ番組で見せる勇気のある一般人に脱帽。 「テラスハウス」の前は「GOSSIP GIRL」を流し見していたけど(古いな!)、ゴシップ・ガールズ(とボーイズ)たちはティーンなので残酷なのは致し方ないが、やっていることが直球で楽しかった。「テラスハウス」は登場人物の年齢がもっと大人なので、忖度しあっている間はつまらない。誰かがかき混ぜ始めると、ストレートになってきて面白い。 ポッドキャストも聞くぞ!!