大地の子ロス

仕事で日中関係の歴史を調べているうち、山崎豊子の『大地の子』に行き当たってしまい、上川達也が出ているドラマを全話、仕事そっちのけで見てしまった。リアルタイムで見ていなかったので、今更驚くのもアレだけど、上川達也の中国語での演技がすごい。 日中関係を長い目で見ると、まるでシーソーゲーム、と調べ物をしながら思った。 翻訳の仕事をしていると、調べ物をしているうちに、ついついいろんなものに引きずられて寄り道してしまう。翻訳に取り掛からねば!! でもドラマだけじゃ物足りなくて、本もポチってしまった。

続明暗

読むのに時間がかかりそうだったので、まとまった時間があるときに読もうと思って積読しといたのを、やっと読んだ。途中、津田にイライラしつつも、楽しんだ。水村美苗が書いているから、情けない男を見限る瞬間の「女性」の視点がよかったな。『明暗』に何が書いてあったかを忘れてしまっていたので、前半に何があったのかを想像しながら読んだ。ま、でも漱石の書いた前半に戻って、津田にイライラさせられるのが嫌だから読まないと思う。 嘘を突き通せると思い、謝罪のタイミングを見誤ると大変なことになる、という落ちが往生際の悪い津田にピッタリ。 すごいなぁ、勇気あるなぁ、漱石の未完の小説の結末を書くなんて。比喩が漱石っぽくてよかった。

香華

昔の女流作家の使う言葉ってきれいだなぁ。芯もあるなぁ。話の内容は花柳風俗史的、花柳界の下から上まで(女郎、花魁、芸者)女の暮らしが書かれている。昔の女性って大変…と思う反面、芸事に優れているとか何かを持っていれば、最悪の事態を回避できる点は今と変わらない。 女郎は、体調を崩して(妊娠中とか)働けないとき、石臼で茶葉を引かされるという風習があったらしい。だから、売れ残りの女の人は「お茶を引く」と言う。そんなトリビアが散りばめられている小説でもある(ま、有吉佐和子だけでなく宮尾登美子なんかもそういう花柳界のトリビアを散りばめて小説を書いていたが)。 逆に、そういう玄人の女性を囲う男の人にも「旦那道」なるものがあり、ホンモノの「旦那」は、自分の囲った妾が別の男性と結婚するとなったら、花嫁道具を一式用意してやるのが最高らしい。 古い和歌山弁がじゃんじゃん出てくるのも、なぜかうれしい。『紀の川』もよかったけど。 1960年代に書かれた、明治・大正・昭和の話なので、40代でおばあさん、50代半ばで総入れ歯、などと、ぎょっとさせられることが色々。 香華=仏壇にお供えするお花のこと。

三人称単数のTHEM

この間のオスカーナイトの「事件」を英語で面白おかしく書いて、とあるところに提出したら、「気に入ったので、来月のニュースレターに掲載したい」と連絡がきた。 提出したときは選考を通るとも思っていなかったし、「私の悲劇をみんなに言いふらしたい」みたいな欲があっただけだけど、実際に紙面掲載となると、自分の思ったことを好きなように書き散らしているブログとは違うから、結局断った。 誤字脱字などは既に編集してくれてあった。文章の最後を見たら、私が「him」と書いた箇所が、ポリティカリー・コレクトにするため、三人称単数の「them」に変えてあった。 最近、性同一性障害などジェンダーにまつわる諸事情を考慮して、三人称単数の「them」を使う人が増えてきている。He とも She とも呼ばれたくない人は「They を使ってほしい」とはっきり公言する人もいる。一方で、この動きを嫌う人も多い。 翻訳しているときもたまに出てくる。 one とか everyone の人称代名詞に「he/she」を使わずに「they」を使うのは既に市民権を得ているけど、ジェンダーを考慮してると思えるところで「they」が出てくることもある。 私など、人の悪口や噂話を英語で話しているときに、できるだけ誰の事を言っているのか特定されたくないので、「He とか She を使ってしまうとばれてしまう!英語は不便だ」と思ってしまう。英語ネイティブの人も「He なの? She なの?」と突っ込んでくる。でも、今回はちょっと違う。私が書いた文章なのだから、私の意図を汲んでほしいし、私の好きなようにさせてほしい。あのドラァグが、私の文章をどこかで読んで、「アタシのことを him と呼んだわね、them にしてちょうだい」とクレームをつけてくることはないだろうけど、あらかじめ them にするのは納得できない。 言葉は時代ととも変わっていくものなので、これもそういうものなのかもしれない... と簡単には言いたくない。人称代名詞はあまりにも頻繁に使われる。それに、They を使ってほしいと言っている「本人」が使うわけではなくて、それを「他人」に使わせるわけだから。私は英語が母国語じゃないから、どこかで間違えるに決まっている。これが人称代名詞でなければ、私も違った考えを持ったと思う。たとえば、「Mrs じゃなくって Ms って呼んで」とか、「Dr じゃなくて Professor と呼んで」なら、簡単だし全然オッケー。 ま、「them を him に戻してください」とニュースレターの編集者に言えば、戻してくれたと思うけど。

ROMA

ROMAって、日本では劇場で上映されていないのね??カナダでは最初から劇場公開されていたので、以下はカナダの話。 オスカー前とオスカー後とで、2回ROMAをネットフリックスで見た(パソコンじゃなくて、テレビで)。「ROMAは、劇場で見た人と家で見た人とで感想が結構違う」といろんな人が言っていた(白黒映画の人たちも)。 1回目は、晩御飯の用意をしながら、まさにROMAの家政婦状態で見たので、「しゃれにならんな、この話」と思って見ていた。で、周囲の人に「暗い、どん底な話」と吹聴してしまった。「あかんたれ」を思い出した。 2回目は、マッサージチェアに座り、時々マッサージしながら見たので、「なんて奥深い話なのだろう」と意見を翻してしまった。 2回目で思ったけど、1つの画面に結構いろんなものが映っていて、みんなが大画面で見たほうがいいと言っていた理由がわかった。英語字幕で見ていたので、2回目になるとちゃんと画面を見る余裕もあったし。 オスカー授賞式でアルフォンソ・キュアロンが「メキシコ、愛してるよ」的なことを何回も言っていたけど、ROMAの家政婦みたいな先住民っぽい人がメキシコに将来を見いだせずにアメリカに来るんじゃないの?と思ってしまった。 全然関係ないけど、ネットフリックスの映画を同時に劇場公開するときは、「ネットフリックスでも見られます」って書いておいてほしい。ついうっかり劇場で見てしまって損した気分になるのが嫌なのよ。ポスターとかには書いてあるのかな?

OSCAR 2019

オスカーの授賞式は見ましたか? 私は、ゲイ地区にあるパブで見ました。今年は違った意味で思い出深いオスカーでした。 授賞式の合間に、オスカーに関するトリビアクイズがありました。 「映画『プリティ・ウーマン』でジュリア・ロバーツは主演女優賞を獲ったでしょうか?」 の質問に、私はハイハイ!と挙手をしたのですが、後ろのほうに座っていたので、一番には当ててもらえませんでした。で、最初の人が「獲ってない」と答え、「ブッブー」と言われていたのですが、私には聞こえませんでした。そこでまた私はハイハイ!と手を上げて、「そこの黒い服を着たアジア人の女!」と指名されたので、立ち上がり、 「獲ってない!」 と自信満々で答えたら、 「最初の人も獲ってないって答えて、間違えただろうが!」 と言われただけでなく、 「人種差別なジョークを言わせてもらうけど、目が細いから、状況がよく見えてないのかしら」 と仮装姿の司会者に言われてしまいました。 私は突然のことで何も言い返せませんでしたけど! それに、まあ、ジュリア・ロバーツが主演女優賞を獲っていた事実が信じがたかった。 ちなみに、そんな変なことを言われたのですが、別に腹は立ちませんでした。そのジョークには誰も笑わなくて、むしろバツの悪い思いをしたので、その司会の才能はない、と思ったのでした。こんな直球の人種差別ジョークを言われたのは初めてだけど、それにしても、ジョークの内容が 2019 年とは思えない古臭さだと思わない?

Never Look Away

もうすばらしすぎて、言葉が見つからない。 188分と長いけど、長く感じないし、誰もがずっと息をするのも忘れるぐらいに見ていた。 長すぎて、お勤めしている人には金曜の夜でないと見られないせいなのか、オスカー授賞式まであと2日だからそれまでに見ておきたいのか(外国語映画賞にノミネートされている)、満席でチケット完売。 ああもう、本当によかった。 近年オスカー授賞式を観る人が減っているとニュースになっている。私がよく見ているニュースのキャスターがチャラいアジア系アメリカ人で「あんなもの誰が観るんでしょうね。候補作品も私はどれも見てませんけど」と言ってのけた。 この人は知らないだろうが、ある一定層の人は、オスカーシーズンが来るといそいそといろんな映画館に出かけ、授賞式も友達同士で見て、みんなであてっこして、セレブの芸能ニュースなど一年間をいろいろと振り返るのだ。見てもいない映画が賞を取っても「ふうん」だが、見たことある映画が賞を取ると、「そーだと思ったよ!」と後から鬼の首を取ったように言うのもお約束。 何事にも「一定層」がいるのだ。ネットフリックスにだって「一定層」はいるし、あてにならない層の人たちがいることも知っている。だから、この間の四半期決算報告で「フォートナイトにはかなわない」と言っていた。 で、そのニューヨークのチャラいキャスターに、私が大好きなトロントの特派員の女性が「私は、ほぼ全部見ましたけど?」と言葉を返していた。 というか、ABC、オスカー授賞式はもう世界各国で無料ライブストリーミングしてよ。

Caught

マックス・オフリュスの映画。邦題は『魅せられて』… お金が幸せを運んでくれると信じて玉の輿を狙ったら、異常に支配欲の強い男にひっかかり、反省して人生を立て直そうとしているうちに、いい人と出会ってしまった。ふたりの男に挟まれて、揺れ動く女。「わたし、どうすればいいの…?」となよなよする女に、いい人のほうの男は女に向かって、こう言い放つ。 「大人になりなよ。自分にとってお金持ちになることが一番大事ではない、と自分で本当に思えるようになったら、俺のところに戻っておいで」 難しい問題だわ、と銀幕を見つめながら思ったね。 「お金持ちになりたい」っていう意味でのお金じゃないんだけど、お金は結構大事なんだよ、成熟した大人として扱ってもらいたいし、自分で自分の意志を貫きたいと思うときは特に。 でも、ふと気付いたら、お金に振り回されていることはあるんだなぁ。気がつけば、「あ、いかんいかん」と自分を戒めるようにしているけど。でも、拝金主義を美徳にしている人だっているから、ホント難しい……

Killing Eve

1月、日本往復の飛行機の中で『Killing Eve』のシーズン1を全話見た。 「オバサン MI5 エージェント vs 若くておしゃれなサイコパス」の女同士の対決でなかなか面白かった。オバサンのMI5(サンドラ・オー)なので、スポーツカーに乗ってもいないし、かっこいい洋服も着ていない。シャリシャリした耐水性と速乾性に優れていそうなカッパみたいなジャケットを着ている(ロンドンっぽい?)。スマホを見るのも若干「老眼始まった?」みたいな距離で見ている。ジェームズ・ボンドよりこっちのが断然面白い。 シーズン2も見たい。 関係ないけど、仕事で Black Mirror を見た。最初の1話で疲れてしまった。今どきな話すぎて……、もうこういうのはお腹いっぱい、です。