編み物の世界は平和で、森の動物やキノコやフルーツの類を模様編みにして遊んでいる長閑なイメージを持っている人は多いと思う。
でも、政治的な立ち位置を表明した作品を編むこともあるし、著作権に抵触するようなヤバそうなことをしてしまう人もいる。まあ、スキャンダルはそれなりにある。
ニッターたちの間で人気のSNS「Ravelry」が、白人至上主義者ニッターを締め出す行為に出た。「白人至上主義者」といっても要はトランプサポーターのこと。2020年の大統領選で再選を狙うトランプを応援しようと、何かの編み図(スカーフ? 帽子?)をラベリに載せていたのだが、今は一般にはアクセスできなくなっている。その編み図製作者は自分の編み図にアクセスできるけど、みんなと共有させてもらえないらしい。まさか、目だけが出せる真っ白なとんがり帽子ではなかったと思う。見てないから知らないけど。
私は、なんかこう、しゃらくさい気分にさせられたね。
トランプ2020の編み図ぐらいは別にいいんじゃないかと思うな。その編み図に触発されて、人種差別的なコメントが飛び交ったのかもしれないし、トランプ嫌いの人々がどうしても排除したかったのかもしれない。
ウィメンズ・マーチがあったとき、ピンクの猫帽子を編んで被ってマーチに参加というのが流行ったけど、あのときも、アメリカの「保守系」の毛糸屋さんが、猫帽子用のピンクの毛糸を売るのを拒否していた。まったく、どっちもどっちだわ。政治的な意見なんて、一部の人を除きコロコロ変わるからほっとけばいいのに。
そもそも編み物なので、トランプ2020のブツを編みたい!と意思表明したところで、実際に完成させるまでには時間がかかる(その前に脱落してしまう人も出てくる)。ましてや、そのブツを着用し、外出する(トランプのラリーに行くとか)までにはもっと時間が経過する。だから「こんなもの、本当に作りたいのかな」とか「こんなの来て外出する勇気ないな」とか心の中で逡巡する時間がたっぷりある。なんとなく、そういう時間はよい時間のような気がする。
むしろ、自分たちと意見が違うからと編み図を排除するラベリが怖い。世界中のニッターが参加できるプラットフォームを作っておいて、それはないだろう、と思う。もし、マーク・ザッカーバーグがトランプ嫌いで、そのサポーターを排除したら大事件になる。ラベリは過敏のような気がする。
まあ、私は表面的な事しか知らないから何が起きたのか知らずに勝手にこんなこと言っているわけだけど。
