Sunset Boulevard

まだまだ外出となると不安が募り、考えただけでもめまいがしそう。でも不自由で外出しづらいなどと、いつまでも言っていられない。足が不自由な白黒映画の仲間と、「一緒に映画を見に行こう!」と話がまとまり、『Sunset Boulevard(サンセット大通り)』を見に行った。

ウーバーに乗らなければ行けないので、かなりお高い映画鑑賞だが、家にずっといるのも気が滅入る…… てなわけでGO!

お互い足が心配なので上映時間の1時間前に落ち会う約束をした。案の定、友達はぎりぎりだった。彼女は杖仲間でも、松葉杖ではないのでポップコーン片手にやってきた。「食べる?」と勧められ、手を伸ばしたら、私の松葉杖がポップコーンの袋をなぎ倒してしまった……

で、映画の話。

昔々、まだ自分の若さがしたたり落ちるほど溢れているときにこの映画を見たことがある。でも当時は、このストーリーの中の大女優の心境を深く理解していなかった。女優は50代(たぶん50代前半)。過去の栄光に、時代にそぐわなくなった才能に、衰えた美貌にしがみつき、若い頃の自分にがんじがらめになっている彼女の気持ちが、今はよくわかる!! なんだろうな、潮目を見極めて、時流に乗るって一種の器用さが求められるけど、「器用に生きる」って小賢しい感じがする。人生に美学をもっている人なら、器用になろうとは思わないかも。

と杖をつきながら2人で語り合った。

白黒映画の仲間は杖仲間。「こんな偶然ってないよね。記念にセルフィー撮ろう!」ということになった。すると、映画館の人が「レッドカーペットが敷いてあるから、そこで撮ってあげようか?」と写真を撮ってくれた。ふたりとも大爆笑で幸せな一枚(ここでは顔出しできないが)。

その後、すぐ近くのレストランに行き、ごはんを一緒に食べた。ヒマそうなレストランってありがたい。ふたりで世の中の「障害者用ボタン」の位置とか、エレベーターの場所などの話題で盛り上がった。彼女のほうが障害歴が長いので、教わることが多かった。

問題は帰り。雰囲気的に、公共交通機関(TTC)を使って、途中まで一緒に帰る、という話になってしまった。さすがに私にはハードルが高いのだが、日曜日だったので、そんなに混雑していないし、杖仲間がいるし、いつかは意を決してやらなければならないことだし……と、TTCに挑戦してしまった。いやもう、恐ろしかった。路面電車が一番こわかった。あと、エスカレーター! あれは恐ろしい! 乗らなかったけど、乗れるのかな?と思って乗り口のそばにいたら、周辺の人たちに「それは君には無理だよ!」と止められた。

概ね、トロント市内の人たちは親切にしてくれるし、手伝いましょうか、と言ってくれる人も多いし、「大丈夫」と言えば放っておいてくれるので、よかった。

結果的に無事家に戻ってきたけど、緊張しきったせいか、その日から2日間寝込んでしまった。

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