無限の網

芸術家として揺るぎない地位を築いてから書いたものだからなのか、それとも草間彌生はいつもこういう突き抜けた自信を持って執筆するのか、よくわからない。ずっと前に読んだ『水玉の履歴書』より尖っていて面白かった。

比べるのはおこがましいけど、何となく私にはわかる気がする。翻訳を仕事にしようと思ったとき、英語と日本語の出版物を沢山読む、文章を毎日書くなど、自分に課したことがいくつかあった。でも、まだ結果が出ていない状態でそういう努力をしていると、「翻訳なんて、他人の書いたものを違う言語に置き換えるだけで、自分の考えを執筆するわけじゃないから執筆業として劣っている」とか「無理して英語の本を読んでいるに違いない」とか「毎日ブログ書いて暇を持て余しているに違い」「ただのブログなのに読者を意識して書いている」などなど遠慮なく批判されてしまう。反論させてもらうが、そもそも、一般の人が1時間ぐらいかけてやることを5分ぐらいでやれるから、職業として成り立つわけなので、読む・理解する・書くのスピードをあげて磨くのは、野球選手のバッティングやキャッチボールと同じなのだ。

で、やっと結果が出始めて、人に「翻訳やりたいけど、どうすればいい?」と訊かれれば、やっぱり自分がやってきたことと同じことを習慣づけるのが一番、と自信をもって言える。この間、エージェントに「仕上がってくる翻訳文って、訳者によって全然違いますか?」と訊いてみたら、「全然違う」と言っていた。「誤訳」というアウトはあっても、それ以外は「個性」らしい。その「個性」を出版社に気に入ってもらえるかどうかという難関がさらに待ち受けているのだが。

話は変わるけど、数年前、東京でアートの展示会に行き、草間彌生の画商をちらっと見かけたが、すごくお金持ちそうだった。まあ、貧乏な画商というのはいないのかもしれないけど。

全然関係ないけど、私も水玉が好きで、昔、某SNSで「毎月第一火曜日は水玉の日にし、水玉模様のものを見につける」みたいなことをやっていた。ある日、グループの人に「主催者のくせに水玉デーに水玉を身に着けていない!」と告発されてしまったが……

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