3部あるうちの一番最後を、白黒映画の友達(おばあさん)とふたりで見に行った。彼女はこの日、「大変です、あなたの銀行がハッキングされましたので、口座番号を教えてください」と詐欺に遭い、口座番号を教えてしまったのである。「詐欺かな?」と呑気なことを言っていたので「詐欺だよ」と答え、「明日、朝一番に銀行に行かないとだめだよ」と励ましつつ、私がこの歳になった頃には一体どんなテで騙されるのかと想像した。年金生活の高齢者からお金を巻き上げようとするなんて!とプチ憤慨した日に『人間の條件』
3時間半に及ぶ上映時間の後、ふたりでお茶していたら、
「日本兵の着ていたあの軍服見たことないわ」
と言うので、白黒映画グループの人だし、この映画は前にも見たことがあると言っていたので、ひょっとしてものすごい軍服マニアで、映画の中の軍服が忠実じゃないとか言い出すのだろうかと思っていたら、
「あれって第二次世界大戦?それとも第一次?」
と訊かれ、彼女の脳内では歴史がごちゃごちゃになっていることが判明。恐る恐る「第二次世界大戦…」と答えると、
「日本はどっち側だったの?」
とさらに訊かれ、彼女が軍服マニアではないことが決定的になった。まあ、今日は詐欺に遭ったことだし、歴史については訊かれるまで、こちらからはこれ以上何も言わないことにしていたら、
「主役(仲代達矢)がカッコいい。名前教えて」
と言われたので、何度も「タツヤ・ナカダイ」と言ってみた。しかし「エ?ナンテ?」と届かないので、スマホを取り出し「tatsuya nakadai」とテキストを打って送ってみた。おばあさんは、自分の携帯をカバンの中から取り出すことなく「サンキュー」と言って終わった。
しかし、このおばあちゃんの感想のゆるさが好き。これが身内だとそうはいかない。

