兼高かおるの本を読んでいたら、取材旅行のおみやげには日本のトランジスタラジオと真珠のネックレスを持参していった、と書いてあった。当時の為替レートが1ドル360円、お金の持ち出しが1日17ドルだった頃の話。
兼高さんのように純粋なお土産として海外に持ち出されたわけではない真珠を私も持っている。何かの用でニューヨークに来た日本人が、真珠をたくさん持ってきていた。このお金の持ち出し制限のせいで手持ちが少なく、「買ってほしい」と言われた日系人女性が、3粒だけ、同情して買ってあげ、それが指輪に生まれ変わった。1950年代の話。
1994年、私はその女性のところに遊びに行き、「あなたにあげる」と言われてもらってきてしまった。本当にもらっていいのかどうかわからなかったから、その人が亡くなったときに、その人の娘に聞いてみた。そしたら「それは本当にあなたにあげちゃったんだから、持っていていいんじゃない?」という返事。
ボリュームのある指輪なのでつけたりはしないけど、この真珠のいきさつはとても大好き。指輪の台から真珠を外して、自分の身につけられるようにしようとしたこともあるけど、そんなことしなくてよかった! よく見ると1粒だけ小さい。今は、この真珠の産地が知りたいと思っているけど、そんなことできるのかな。

