「史上最高の指揮者の栄光と挫折」という副題が付いているけど、背表紙の『カラヤン帝国の興亡史』の主題だけが見えていた積ん読状態が長く続いた。そのうち「カラヤン帝国とは一体どこだろう、旧ソ連内にあったのだろうか?」などと首をかしげるほど忘れていた。
内容は国盗り物語ふうで面白かった! 威嚇、牽制、報復といった権謀が散りばめられていて、人の性格やその人の打った手があるときは功を奏しても、時を置いて別の局面では裏目に出たりする。読んでいるうち、権力を持つ人達の粘着性に若干疲れてはくるが。御用聞きのような、カラヤン絶賛の視点では書かれていないのがとてもいい。政治力に長け、ビジネスマンのような一面もあるカラヤンに人間らしさを感じた。
読みながら Google Play Music でカラヤンのアルバムを色々拾って聞くのも楽しかった。ソ連で演奏しライブ収録されたシャスタコービッチの交響曲10番で、最後に観客がどわ~!っと喜んでいるのが聞こえるアルバムがよかった。
著者の中川右介さんはアイドルのことを書いた本も出していて、最近知り合いがこの人の書いた「山口百恵」の本を絶賛していたので、それも読んでみたい。芸能事務所の勢力図的なことが書かれているのかもしれない。ヒデキ研究に間接的に役立つかも(時代が重なっているから)。

