シンキング・マシン 人工知能の脅威ーコンピュータに「心」が宿るとき。

手前味噌で失礼します。

しばらく前に翻訳した本が出版されたので、それの宣伝です。

すごくどうでもいいことですが、この仕事を頂いたときに、姪っ子の結婚式に出席したのですが、その子の名前をローマ字で書くと「AI」になるんですね。やー、驚いた。

で、肝心の本はこちらから試し読みができます。
http://www.mdn.co.jp/di/book/3216203004/

世の中にはAI関連書籍がたくさんありますが、この本のいいところは、著者自身が技術者ではなく若いジャーナリストである、ということかもしれません。こんなことを私が言うのもなんですが、もしも著者が定年間近の人だとですね、今後どうすればいいの? という不安は「他人事」になってしまうのではないでしょうか。たとえばビルゲイツは警鐘を鳴らせても「もうそのころ僕はいないし」と思っているかもしれないし、ひょっとして密かに自分の脳を永久保存する手配をしているかもしれないですが、そんな高みからアドバイスをもらっても、私たちには関係なくない? なのです。そういう意味で、この著者はデジタルネイティブ世代に近いからいいんじゃないかな、と(はっきりした年齢は知らないけど)。

この本は「AI、AIって騒がれてるから……」と、なんとなくAIニュースを日々クリックしている、別にSFファンでもない、私のような人にAIにまつわることをいろんな角度から考えさせてくれる一冊です。一応、その技術についての大雑把な説明や、学問としての歴史など背景として知っておいたほうがいいことも書かれていますが、3章目あたりからこの本の良さが出てきます。どのAI本もまずは歴史の説明から入っているので繰り返しになるから、既に基礎知識のある人はすっとばしてもいいかもしれません。

読んでいると腹立たしくなることもあるし、将来的にありえそうな哲学的な問題も出てきます。だからこの本を読むときは、グループとかブッククラブみたいなところで読んで、人と話をしたほうがよりいいんじゃないかと思います。

「またAIか…」とお腹がいっぱいになっている人は、訳者あとがきをまず読んでもらうと、「あら?そうなの?」と少し興味を持ってもらえるかも知れません。

この訳書の紹介ということで、ニューズウィークにも記事を書きました。こちらも読んでみてください。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/ai-11.php

AIにどう立ち向かうか? 翻訳もAIに奪われそうです。人間による翻訳は「えー!それって誤訳じゃない?」とネットで囁かれ、翻訳者が叩かれたりするのが普通です。しかし、そこには「訳者の人格が叩かれたりする」人間ドラマとか、ワイドショー的な価値があります。でも機械による翻訳だと、そういう価値はぐっと下がるか無きに等しくなるのです。AIが翻訳した本はそんなに売れないけど、村上春樹が翻訳した本はもっと売れるはずです。

世の人々が見たがっているもの、特にドロドロしてるものは、人間がやらないと面白くないんじゃないでしょうか。たとえ囲碁の対局がコンピューター同士になろうとも、ゴシップ的にはそのソフトの開発者のバトルになる、と私は思うのです。だってAI同士の対決なんて、はっきりいって全然面白くもなんともないですよね。

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