結婚式出席のため日本に帰国。そしたらタイミングよく、去年翻訳した本の発売日と重なった!
地方の小さな書店にはなかったけど、東京の大きな書店だとどこでも平積みされていたし、話題書コーナーにあったりしてうれしかった!前回プロフィールに「三重県うまれ」であることを書かなかったことを後悔したので、今回はそれを付け足しました。だから三重県の書店で平積みしてほしい!タイトルは『アシュリーの戦争』です。http://www.amazon.co.jp/dp/4046014512
本のプロモーションのため、ニューズウィークに紹介記事も書きました。結構好評だったようで1週間以上「最新記事」のトップでした。まあ、あんなに何度もこの本を読んだのは私ぐらいだし、自分で言うのもなんだけど、本当に心からお薦めできたと思います。まずはこの記事を読んでから購入してみてください。
「USA! って感じ」という声をネットで見かけたので、アメリカ目線って何なのか、ということについてちょっと書こうと思います。
まず、著者はアメリカ人女性。アメリカの軍人たちを上層部から前線に立つ人までインタビューしています。大手メディアや有名な外交シンクタンクで働いていたことがある人なので、内部に食い込んでインタビューできるコネを持っている人なのでしょう。そんなふうに情報収集しているから、特に前線に立った兵士たちの努力を否定するトーンでは書いていません。聞いたことをありのままに書いているようなかんじです。
第1章は政治的、歴史的背景の説明なので、ちょっとドライです。でも、なぜ特殊作戦なのか、なぜ女性兵に活躍の場が与えられるようになったのかが緻密に描かれています。第1章でぐったりしてしまったら、第2章に飛ばして読んでください。
あと、著者はもともと紛争地域の女性起業家に興味を持っていた人で、彼女の前作「The Dressmaker of Khair Khana」という本もすごくいいです。日本でいうと、少し前のNHKの朝の連続ドラマの「カーネーション」に似た話。(これはまだ翻訳されていないようだけど翻訳したいです。よろしくお願いします)
アメリカがイラクに侵攻したときに(ブッシュ息子が大統領のとき)、アメリカ人の間では、反対の声も賛成の声も同じぐらいに強くて意見は分かれていました。9・11の後「報復をよし」とする空気は一気に強まりましたが、それに躊躇している人も本当に多かった。それはアメリカ国内に住んでいなければ実感できなかった空気かもしれません。
それからずるずると15年ずっとアメリカは戦争していて、「いいかんじで手を引きたい」と思っているような気がします。「え?まだ戦争してるの?」と思っている米国民は多いし、アメリカは特殊作戦を多用しているから、ますます米国民は「へえ」で終わることが多いと思います。そういう中で、妻(娘)を戦争で失って悲しみにくれる家族の割り切れない気持ちもこの本には書かれています。戦争に行かなければポケモンゴーで遊べる国なんですから。
それから、アフガン系アメリカ人通訳のジレンマも書かれています。第二次世界大戦での日本語語学兵のジレンマと同じでしょうか。戦争の闇を見るような辛い思いです。
実際に書かれていることだけでなくて、そこから想像を膨らませると、この本が示唆していることは重要です。「やられたらやり返す」を実際にやってしまったツケを、9・11のときにはまだ子供だった女性たちが払っているのです(実戦は若い人でなければできないので、若い人の代償は計り知れないほど大きいですよね)。それが「米軍内の女性進出」に重なっています。もちろん、その女性たちは愛国心に満ち溢れているし、戦士になることに憧れているので、彼女たちから見れば「やっと地上戦で戦えるときがきた」というチャンスなのでしょうが。実際、彼女たちは死を覚悟して戦場に赴きます。
そんな女性兵士たちが見たアフガニスタンのことも書いてあります。男性兵目線で書かれたこれまでの本とはまったく違います。
原作者はニュースにはならないような良識的なアメリカ人を一生懸命綴っていると思います(ニュースになるのはトランプとかでしょうから)。それを「USA!ってかんじ!」と思ってもらえるなら、それはいいことなのかもしれません。

