勝率ゼロへの挑戦

最近知人に勧められて読んだ。

#検察なうのハッシュタグぐらいは知っていたけど、冤罪について私の知識は乏しくて、袴田事件など事件の名前を知っているとか、「それでもぼくはやっていない」の痴漢冤罪の話とかそんな程度。日本の刑事裁判の有罪率が99.9%であることを知ったのも、この映画を見てからだった。

でも、ストック オプションで得た報酬の確定申告に関してはわりと知っている。そういう報酬制度のある米国企業に長く勤めていたから。しかも、その頃のアメリカでは「ストック オプション バックデーティング スキャンダル」が起きていて、スティーブ・ジョブズだって巻き込まれていたし、罰金を払わされたシリコンバレーの有名企業は多かった。

でも、私のような下々の社員たちは、自分たちの報酬が今後どうなるんだろうと心配しているだけだった。やがてストック オプションに代わってRSUが登場し、それに不満を持つ社員が結構いたのもあって、個人の確定申告も含め、会社からその説明会が何度もあった。基本、会社は源泉徴収しないから、自分でちゃんと税申告しろよとか、キャピタルゲインの税率になるからラッキーですよ、とかそういう説明会だった。

だから、はじめは、八田さんがなんで申告し忘れたのかが理解できなかった。でも、それは、さっきいったような背景があったからで、しかも、居住国も違えば、納税する国も違うし、業界も職種も忙しさも所得のレベルも、八田さんとは違うからなのだった。

裁判の争点が「故意か過失か」なので、八田さんが「真実は過失」と主張するなら、ま、そういうことにして…… と読み続けたのだけど、結果的に「私は何に偏見を抱いているか」を紐解いていく読書体験になって面白かった。やっぱり検察で取り調べを受け始めたあたりからは引き込まれるように読んだ。

八田さんが失ったものは他人からは想像できないほど大きいと思うけど、逆境を逆手にとって活躍する姿はすごい。


http://www.amazon.co.jp/dp/4334977847

アメリカには法曹界をネタにしたドラマがいっぱいあるし、刑事裁判の行方は、それが有名人が絡んでいたり、ものすごくお騒がせな事件のものだったりすると、ワイドショーネタとしてものすごく注目を浴びる。ドラマは数が多いから、どのショーが弁護士から見ても現実に忠実か、と話題にもなる。私が見てい(た)のは「Drop Dead Diva」で、一般人にも降りかかりかねない事件と、その裁判の裏を見せてくれるから、知らない間に知識が積もっていく。

八田さんの体験は大河ドラマになるぐらいだと思うけど。この本の印税も冤罪犠牲者のサポートに回すということなので、興味のある人は是非。

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9%E8%A8%BC%E5%88%B8%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%94%B3%E5%91%8A%E6%BC%8F%E3%82%8C%E4%BA%8B%E4%BB%B6

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