人間そっくり、とその他

ずっと前に友達に「こっそりと忍ばせておいたんだけど気づいた?」と言われるまで、実はすっかり忘れていたこの本。SFはあまり好きじゃない。たまーに読むけど。ネットでは「SFが苦手なのに友人に勧められて読んだ」などと言っている人が多い印象を受けたので、初級編なのかな。確かに、見ただけで読む気が失せる難しい宇宙用語(?)とか、高度なサイエンスの概念が少なめだった。にもかかわらず、3分の2を読み終えたあたりで漸く「面白いかも」と思い始め、やっぱりエンジンがかかるのが遅かった。安部公房は嫌いじゃない。箱男とか、砂の女とか、好きだもん。

「俺のことを地球人だと思っているだろうが、実は火星人だ」などというのは、サンフランシスコの市バスに乗り合わせたオシッコ臭いクレイジーなおじさんが言いそうなこと。彼らは独り言だけど大声で言う。乗り合わせてしまった運のつきで、黙って聞いているうちに「確かにコイツは火星人かも…」と思ったりする。なんかそういうニオイの漂う話だった。…と書いているうちにサンフランシスコが懐かしくなり、帰りたくなった。

誰にも証明できず、堂々巡りの会話になってしまうのは、「神様がいると信じているかどうか」などという会話にありがち。「私は男にモテるのよ!」と信じて疑わない女に、反証してみせて自信をメッタ切りするか、心ならずも「そうなんですねぇ。すごいでずねぇ」と肯定するかは、「モテる」という発言を、馬鹿馬鹿しくても「公理」として受け止められる懐の深さにかかっているような気がしないでもない。訂正癖のある人には辛いだろうね。SF小説というより「ドツボにはまってしまった人の話」のような気がした…

これを読んでいるうち、米原万里さんの東京の家(彼女が鎌倉にペレストロイカ御殿を建てる前の家だと思う)は、結構私の東京滞在先の近くであることを知った。ま、それだけの話だが、彼女の著作のファンなので、テンションは上がった。でも、これは軽ーいはずのペットネタがちょっと重めなので疲れた。

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