フランス語が堪能な友人がパリに来ている時期を狙ってパリで合流。ユーロスターでフランス入り。十年ぶりのパリだけど、古い町並みは変わらないのに店が変わっていたりして、少し驚いた。いろいろと古い想い出も蘇った…
足場のよさげなサンジェルマン地区からパリのいろんなところを散歩。友人の案内あり単独の時間もありの二泊三日の滞在のお目当てはマトリョーシカ。友人に教えてもらった専門店がパリ市内に二店舗。土産物のレベルを大きく超えた質の高いマトリョーシカにお目にかかることはあまりない。楽しみにして店に足を運んだ。
まずサンジェルマン店をチェック。店内に入るや浮き足立ち、怪しい人だと思われないように「マトリョーシカを集めているので、ものすごく時間をかけて見ますから、気にしないでください」と先に断る。気に入ったものをテーブルの上に次々に乗せて、人形を開いていく。店に置いてあるものはこれまでに見たことのないようなものばかり!人形に描かれた精緻な絵や技術を手にとってシゲシゲと堪能なんて幸せ!
次にマレ店。こちらの店舗は若干狭いけれど、置いてあるマトリョーシカの数と質は変わらないと思う。置いてあるものも少し違う。こちらの店員は接客業向きの人で、私が気に入ったものをどんどんとテーブルに載せ展開させていると、「どうぞ座って!」とか「入荷したてのがあるから持って来るわね」とか奥からどんどんと出してくる。そんなわけで私は店の真ん中にどーんと腰をおろしてマトリョーシカを展開させて並べたりしていた。
マレ店の店員さんは、私の好みでないためにこれまで見向きもしなかったものでも「この絵柄はね…」とデザインの背景や意味を教えてくれる。「こんな店で働きたい!毎日マトリョーシカに囲まれてるなんて幸せ!」と言うと、「いえ別に。マトリョーシカは一つも持っていませんし」と冷めた返事が。ここで私は思った。もし私がこの店の店員ならマトリョーシカについて熱く語れて、優秀な営業成績を残せるのではないかと… でも給料はみなマトリョーシカに散財してしまうな。
新しく学んだこと(1)
箱根からロシアに伝わって出来たマトリョーシカは、最初は卵型であったらしい。箱根のロクロ細工の田中さんも卵型のものを彫っているのでそれは納得。それが時を経て人間っぽくくびれた形になって、そのうちふっくらとしたオデブさんも出来てきたとのこと。これがその卵型マトリョーシカ。

新しく学んだこと(2)
精緻なタッチの絵が描かれた高級マトリョーシカは大人が集める工芸品で、安くて可愛いものは子供用。子供用だからこそ、寓話を話して聞かせたり数を数えるのに使ったり、マトリョーシカに書かれている絵を見せて「これは誰?これは何?」と話しかけるのだそう。その説明にも納得。
新しく学んだこと(3)
絵柄については店の人に聞くべき。私好みのものはなかったが、火の鳥を描いたマトリョーシカがとても多い。それがマトリョーシカの女の子のスカーフやドレスの模様になって紛れ込んでいることもある。火の鳥はロシア民話によく出てくる。たとえば、これは私の好みじゃなかったけど、ブルーのマトリョーシカというのが珍しいので質問してみたら、火の鳥をモチーフにしたロシアの青と白の陶器をもとにしたデザインなのだそう。

マレ店では一人しかいない店員さんと楽しいひと時を過ごした(2時間はいたけど誰もほとんど客が入ってこなかった)。この二店舗で合わせて四つ買った。
そもそも私はマトリョーシカを開いたときの「驚き」が大好きなので集めている。これは可愛さに驚いた。

バブーシュカを巻いたふくよかなお姉さんの中からは、イチゴとキノコが!
しかし今回は一番外側の人にも驚かされた。パン職人一家。外側のお父さんはケーキとドーナツ型のクッキーを手にしているが、クッキーが飛び出している!「枠」から飛び出す手法というのは日本の版画にもあるけど、まさにそれ!お母さんはイースターエッグ、息子はミルク、娘もミルク、末の子はミルクカップを持っている。

そして、今回私としては贅沢をしてしまった一品。お店の人いわく、初期のマトリョーシカの顔はさっぱりしていて、その原点に戻ろうとしての作品らしい。元祖は箱根だからなのかしら、コケシっぽい和な雰囲気が。バブーシュカも巻いておらず、なんとなく小花が散らしてあるだけ。そして、マトリョーシカの金色の部分はシールであることが多いのに、これはちゃんと金色の絵の具で描いてあるからピカピカしてない。グロスっぽいニスも塗ってない。お腹に描いてある絵がロシアの伝統的建物だけどそれが細かい!!

最後にマレ店で散々遊んだ挙句、お別れしてドアを閉めようとしたら、「あの、コレ!おみやげにもってって!」と手渡されたのがこれ。コロッケの「ちあきなおみ」ふうな上目遣いがヨロシイ。

これもみな友人のおかげ!サンキュっ!

