いつものトロントの毛糸屋さんで、本の話をしていたときに勧められた本。「翻訳者が出てくるから」というのがお勧めの理由。翻訳者は主人公ではないけれど、「翻訳」はこの物語の重要な要素。私は英語で読んだけど、村松潔さん(マディソン郡の橋の訳者)訳の訳本もある。
話の構成が複雑で登場人物も何人もいて、ある人の話が何章も続いたかと思うと、突然別の人が別の時空間で登場する。誰の話かということは、各章のタイトルにくっついている「印」でわかるらしいが、そんなことは後で知った。登場人物の名前をメモしておかないと混乱する。まとまった時間があるときに一気に読んだほうがいいかも。私は最初混乱して面倒になって放り投げる寸前だった(が、気を取り直した)。セント・アイブスからの寝台列車の中で後半は一気読みした。放り投げなくてよかった。最後の数行を読み終えると感無量。
The History of Love、つまり「愛の歴史」なんだけど、ここにはいろんな形の愛が描かれていて、その愛はみなどこか行き場を失っている。
戦争で人生もろとももみくちゃにされた愛。愛する人を失った愛。愛する人に自分がこの世に存在しているということが知られていない愛。素直になれず本心とは裏腹な言葉に翻弄される愛。気持ちを言葉にできない愛。愛ゆえに苦悩する相手の心に踏み込めない愛。愛ゆえの秘密や事実隠蔽。いろんな形の愛に溢れた話なのに、登場人物はみな愛の着地点を探している。
主人公は諦めの境地にいるけれど、実は諦め切っているわけではないので、長い長いお話となり、最後に、本当に最後の数行で着地する。
こんなに長い間、話に振り回されても、この数行を読めば「生きていてよかった」と心から思える(そう私は思った)。
そしてこの「愛の歴史」をつないでいくのが「翻訳」だった!
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「文学ラブ」があちこちに散りばめられているのがちょっとうっとおしかった。それが挫折しかけた原因のひとつでもある。

