テレビ消灯時間3での発見

ナンシー関の本をどんどん人から借りて読んでいるうちに、ニットネタに当たった。時代から考えて当然、広瀬光治。

時々ニット界で「男」がちやほやもてはやされる。今だとアルネ&カルロス、スティーブン・ウェスト。もう少し古い世代だと、ケイフ・ファセット、そして広瀬光治。他にももっといるかもしれない。

最近、編み物の動画を見ていると、アメリカ中西部出身っぽく見える白人の眼鏡かけた醜男がオネエ言葉で、全然可愛くないニットを教えているか、売っている広告を見かける。そしてそんな彼を取り巻くニット好きな女たち。この広告に今一番ムカついていて、クリックしたくない。ほかの世界だと歯が立たないけど、ニットの世界なら「希少価値」をウリにブレイクできるかもという算段が明らさま。何でもアリな敷居の低さが編み物のよさとはいえ、アルネ&カルロスも、スティーブン・ウェストも、ケイフ・ファセットも、広瀬光治も、ニット作品はやっぱり一目置かれて当然な「実力」があるもんな(それを好むかどうかは別の話)。

それにしても、ニット界に降臨する男たちは大体がゲイであるというのもあるかもしれないけど、ニット界の女たちに何の抵抗もなく受け入れられ、もてはやされるのは何故だろう。ファンクラブさえある。昨日広瀬光治のウェブサイトをチェックしたら、「ファン募集中」だった。なんとなく「前世代のニット貴公子」というニオイの立ち込めるサイトだった。

話は元に戻って、なぜ男ニッターがもてはやされるのか(日本で)。昔昔の話だけど、スーパーのレジで働く人が「若い男の子がローテーションに入っていると、職場の雰囲気が和らぐ」と言っていたのを思い出した。単に「若い」だけではダメらしく、「若い、人当たりがよい、可愛らしい」などの質を兼ね備えていればなおのことよいのだと思う。女だけだと殺伐とし、バトルが一触即発状態が続く、というような話であった。私もかつて日本でOLをしていた頃、一日の唯一の楽しみが「荷受にやってくるFEDEXの美男子と伝票と荷物の確認をする時間」だった。あまりにも浮ついたひと時だったので、私は、本来なら船便にして安くあげなければならない重い鉄の工具を、FEDEXの飛行機で香港に送ってしまい、送料40万円の請求書を見た上司に「誰だ!こんなことをしたのは!」と叱られたことがある。よくクビにならなかったものだ。

都市部に限った話だけど、北米のニットナイトに行くと、一人ぐらいは男ニッターがいるし、毛糸屋にも男の店員がいたりもする。圧倒的に女が多いけど、少数派ながら男もいる。そういう男たちが「緩和剤」の役割を果たしているかというと、そんな力はなさそうに思う。アルネ&カルロスも、スティーブン・ウェストも、ケイフ・ファセットもそういう役割は負わされてはいないと思う。ただ、北米には広瀬光治的な存在はないと思う。あれは何だろう、宝塚的な要素があるよね。日本にしか存在しえない。

思うに、日本のニット「業界」には優秀な日本人女性デザイナーがたくさんいて、小さなパイを分け合っているというか分捕り競争しているので、煮詰まりやすいのじゃないか。ゲイのニッターならば、いい「緩和剤」だし、新風を吹かしてくれるよね。作品的な新しさより、ニットに対するアプローチへの新しさ、というかさ。

そして、アルネ&カルロスはわざわざ遠方から来日してるんだから、ついでに眼鏡の広告にも出たほうが、絶対にモト取れると思う。

もうワタシ絶対にナンシー関の読みすぎ。

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