「島根に行く」と言うと「出雲大社に行くの?」と必ず聞かれる。しかも2013年は60年に一度の遷宮で屋根が葺き替えられた。伊勢神宮の20年に一度の遷宮と重なった稀な年だった。三重生まれの私は「遷宮の年にお伊勢さんに行くと人混みがすごいから」などと言って参拝を避けるけど、ここに20年と60年の差があるね。あと20年ぐらいは軽く生きるだろうという楽観が… たぶん私が出雲大社の次の遷宮を見るのは空から。
一畑電車に乗って出雲市駅から大社に向かう。どこか別の鉄道会社からの中古車両を走らせていて「こういう車両に昔乗ったことがあるな」という懐かしさを感じ、思い出に浸る。縁結びだとかパワスポ巡りに黄色い声をあげている女子たちとはもうこの時点で「旅情」が違うのである。
ひとたび出雲情報を集め出すと「縁結び」という言葉がやたらと飛び交いちょっとうんざりする。霊験あらたかな場所を否定しているわけではないけど、パワスポに関しても、2つの遷宮が重なった2013年に向け、メディア、旅行、土産物業界が時間をかけて流行らせてきたのではないかなどと疑ってしまう。そんな私に、出雲大社について本を読んだことのある義理弟が「お姉さん、今から本を読んで勉強したのでは寝台列車に乗り遅れますから」ということでササっと教えくれた。島根の方にも神話を深く知ると島根の旅がより一層楽しくなりますよ、とも言われていたのだった…
私の行った12月中旬は大晦日と元旦を控えていた時期で人は少なかったのかもしれない。それでも人は多かった。自分とは違うノリのものや人に気圧されて盛り上がらなかった。地元の人に尋ねると「遷宮じゃないときのほうが参道も落ち着いていて地味ですよ」という。きっとそういう頃のほうが好きだと思う。早々に参拝を済ませ、誰もいない宝物館のようなところを見学して終わり。
しかし出雲市駅付近の寂れたシャッター街に喜び3往復。60年に1度の遷宮の年でもあのシャッター街に活気が戻ってこなかったのだなと残念に思ったりしていた。伊勢だったら「(伊勢神宮の)おかげ」と言われる経済効果がやたらと目につくのにな。これも20年と60年周期の違いなのかしら。いや、ただそういう効果は松江に流れているだけなのかしらん。しかし、もし旅の同伴者がいたらこんなシャッター街をうろつくことはできなかったはず。独り旅でよかったわん。
歩き疲れて入った店が島根の人がやっている沖縄料理レストラン。メニューをよく見ず「お一人様歓迎」の貼紙だけを見て入っておきながら、「ここ島根の料理を出す店じゃないんですか?」と驚いた。若いときに島根から外に出たくて南下し、沖縄に惚れてしまったのがきっかけでこういう店をやっているが、最近島根もいいなと思うようになってきて地元の料理や酒も出しているという。なんとこの店でスペインで勇気がなくて手を出さなかった「カメノテ」の酒蒸しをいただいた!見た目が調理後もグロテスクであるが、中身はピンク。そして厳つい殻を割って苦労して食べる割には身が小さい。みんなで分け合いながら食べたい一品だが、なんたってお一人様。これを全部一人で食べた。しかしカメノテの出汁は非常に美味しい。島根では漁師や海で遊ぶ子供がこれをおやつとして食べたりしていた(いる?)らしい。
あとは松江のことだけだな。





