巴里の空の下オムレツのにおいは流れる

機内で石井好子の「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」を読んだ。昭和38年に書かれた食に関するエッセイなので今読むと「健康に悪そう」と思わずつぶやいてしまうほどバターたっぷりな食事の話が多い。和食派の人には胸の悪くなるような話。でも日本食の食材が簡単に手に入らずにスパゲティを代用してそうめんを作るとか、石井さんとは時代も居住国も違うながらも海外生活者ならその苦労が分かる。駅弁の話も出てきて、石井さんのお気に入りの駅弁に私の大好きな「めはり寿司」が挙がっていた。ほかに「ます寿司」、「鯛寿司」などどれもこれも同感するけど私は「柿の葉寿司」も仲間に入れてあげたい。

私は料理をあんまりしない(できない)のに親戚の叔母が経営しているペンションで食事の用意や後片付けを手伝ったことがあり、電気釜でご飯を炊いたにもかかわらず大失敗したことがある。料理のプロである叔母から「バターを入れてかき混ぜて!」と間髪入れずに指示があり、バターライスを瞬く間に作った。石井さんも同じ方法のバターライスの作り方をこの本で紹介していたから思い出した。余談だけど、このペンション生活で毎晩UNOをやって負けた人が次の日の朝食を作るという罰ゲームがあって、私が朝食にお味噌汁を作ったら「塩辛くて食べられない」とみんながお椀を持って蛇口に走っていったことがある。実は味噌をどれぐらい入れたらいいのか分からなかったのであった…

Kindle版すら出ているこのエッセイがどうしてこんなにロングセラーなのか不思議だったけど、単に食べ物の話だけでなく、石井さんのキラキラと華々しい交友関係や育ちも出てくるし、ヤワな深窓のお嬢様ではなくてキリっと筋が通ったところが面白かった。

2 thoughts on “巴里の空の下オムレツのにおいは流れる”

  1. この本、大好きです!
    本来「食」を柱に本やTV番組、映画などを制作する際には
    品格と教養、そしてある種の覚悟が不可欠なのだ、ということがよくわかる名著だと思います。
    たしかこの本の上梓にあたり、「食べ物のことばかりズラズラ書き連ねるのは下品」という当時の風潮に少なからず晒されたというようなことをご本人がインタビューで言及していました。
    その時点からこんな近未来に同じテーマがこれほど濫用され消費され尽くされるようになるとは、夢にも思わなかったことでしょう。

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