話の背景となる登場人物の服飾品、住まい・不動産、家具・車の家財道具すべてに「値札」がついているという、よく言えば新たな試み、悪く言えば「いやらしい」話。
あらすじは… 少女漫画風。『キャンディ・キャンディ』みたい。キャンディのように金持ちからのいじめに対して我慢強く、頭のいい女の子がいて、その彼女の傍にはアルバートのような彼がいる。次から次へと襲う不幸にも、金にものを言わせて「緩和策」をとる。半端じゃないですよ、大金持ちがすることは!!
本文よりも脚注が興味深い本。脚注にはシンガポールのオールドマネーの超大金持ちのライフスタイルがいろいろ説明されている。彼らが通う学校の話、シンガポールの年金制度(フェイスブックの共同創始者のエドワルド・サベリンがアメリカ国籍を捨てシンガポール国民になった理由についても憶測できる。彼はシンガポールの金持ちランキング7位に食い込んでいる)、朝鮮人参で最高級とされるのはワシントン州産のもの、などなど。脚注にではないけど、中華系富裕層にとって重要な資産のひとつとされるのが「カナダ永住権」とも書いてある。カナダにしばらく住めばその威力はあちこちに感じるので笑えない。
周囲の英語話者で読書好きな人たちが「笑えるよ」と薦めるのでこれを読み出したが、私はすぐにものの値段を「ハウマッチ?」と聞きたがる類の人が超苦手で、やたらとものの値段を教えてくれる拝金主義な人たちがきらびやかに登場するこの小説を1割ほど読んで嫌気が差してきたところ、休暇から戻って気を取り直して読み出したら、この脚注と少女漫画風の面白さに気づいた。後半はもう北京オリンピック開幕の花火のごとく、ドドーンドドーンとものすごいスケールで「トンデモな話」が繰り広げられるので、それに付き合ってゲラゲラ笑うのも、少女漫画を読んだときのように少々目を潤ませて「レイチェル!頑張って!」と読むのもいいかもしれない。
海外在住の金持ちアジア人にはありがちな話とも言えるけど、6人に1人が百万長者と言われるシンガポール。金持ちの絶対数だったら東京のほうが多いけど、金持ちの人口密度がシンガポールはとても高い。この本の著者もシンガポール富裕層出身だけど、この話はどこまで現実味を帯びているのかという話で旅行中ポルトで盛り上がり、シンガポール在住アメリカ人が「大アリな話!」と言っていた。そして、この話には一昔前の中華系富裕層が中国本土出身のニューマネーの富裕層を毛嫌いする発言がちりばめられている。紅毛碧眼の人もバカにされているけど。
この話を笑えないマジメで左翼的な人もいるかもしれないけど、これを漫画だと思って読めばかなり楽しい。できればコミカルに映画化して欲しいけど… と思っていたら、既に映画化する権利を勝ち取った商魂たっぷりな人がいた!

