3月半ばというのに雪が降る降るトロント。それでもレンギョウなど春一番に咲く花たちの木の芽は今にも吹きそうにふくらんでいるから不思議です。
日本のブックオフで本を売ったお金で何か買おうと思って「雪国」
「伊豆の踊り子」も「雪国」も子供の頃に読んだことがありますが、難解過ぎて何のことかさっぱり分かっていませんでした。漢字が読めず言葉の意味が分からず辞書片手に読んだし。
この話を灰色の冬空の下で読んでいたら、あの出だしから薄っすら漂う不幸を追体験できました。でもこの話は太陽の光が燦々と眩しい土地でもアリな感じがします。なぜなのでしょう。そして別に日本人で芸者じゃなくても、スペイン人で娼婦というのでもアリな気がします。温泉街じゃなくて浜辺の鄙びたリゾート。でも階級差のある土地じゃないとダメね。カナダじゃあダメ。薄幸で美しく芸達者な娼婦が全然似合わない。
人生を高みから冷笑的に見ている人(男)と、自分の目線で人生を懸命に生き抜く人(女)。
大人になって読み返しても、ふっと話が飛ぶところがあってどうして飛ばすのかなと疑問に思っているのですが、人生の高みにある人はいちいち他人の人生にどっぷり浸からずにさらりと関わるという美意識を表現するためなのかしら、と。

